死因究明のための基礎知識

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野良猫が虐待されたことを疑う案件は、信ぴょう性に欠けるものも含めて結構耳にします。

信ぴょう性に欠けるというより、なぜそういう結論に至ったのか根拠不十分だよねという件がおおいです。

でも実はそれは仕方がないことです。

むしろ決めつけてる方が信ぴょう性に欠けるということを説明していきたいと思います。

この記事を読み進めると、これはこうだからあなたが言っていることは信ぴょう性なし!といえるようになります。

という冗談は置いといて、本気で死因究明しなければならない場合に知っておくべき流れがわかるようになりますので、死因究明のための基礎知識について書いていきます。

記事を読んだら死因究明の全体像が見えてくるはずです。

死因究明までの4つの行程

動物の死因究明は、おおまかに分けて4つの行程が必要です。

①それまでの経過がわかっていること

②遺体の適切な保管

③解剖検査いわゆる剖検

④組織の病理検査(ここも含めて剖検ということも)

①、②は飼い主や発見者がやらなければならない仕事です。

③④は専門家がやるべき仕事です。

剖検する理由

行程を説明する前に大前提として理解すべき点を説明します。

ペットでも野良猫でも剖検して死因を解明までしないことが多いとおもいます。

理由としては

  • 診断がついている
  • 死後の遺体をわざわざいじるのは可哀想という気持ち
  • 死因究明までの4行程の大変さ

高齢ペットで、仮でもいいから診断がついていて、その治療を続けたけど病気が進行して亡くなってしまった場合や、若くても交通事故など誰が見ても明らかな場合は剖検しないです。

次に死体をいじるのは可哀想という理由。

これは言葉にするのは簡単なのですが、死因を知る価値と、遺体をいじることの不憫さを天秤にかける必要があります。

死因を知る価値というのは、ただの飼い主や獣医の好奇心ではなく、死因判明によって、医療の発展や飼育改善、虐待であれば証拠になるなど次につながることで初めて価値を生みます。

もっといえば死因を知った人が、その価値を生むことができるかが重要です。

その価値を生むことができないのに、死因究明をすることはただの遺体への冒涜になると僕は考えています。

ペットの場合、死因究明によって、飼い主の自責の念をおさめることができるという一面も、場合によってはあるかもしれませんが、それは一旦置いときます。

要は、死因究明のために剖検するという覚悟は、生半可な気持ちでは到底できないものなんですよね。まずはそれを承知していただきたい。

実際の流れ

では、いざ死因究明に動くとなったときの話にはいりましょう。

改めて全体像を確認しましょう。

遺体の適切な保管

最初のハードルは保管です。ここで失敗したら終了です。

傷んだ遺体の剖検は重要な情報を得ることがとても難しくなり、場合によっては剖検を断られます。

このあたりは、飼い主や管理者、発見者がやる仕事です。

遺体は目に見える変化がなくとも死後の経過とともにどんどん腐っていきますし、細胞レベルでいえばどんどん形を変えていってしまいます。

それを止めるべく、適切な温度で管理しなければなりません。

ここでよく腐敗を止めるために冷凍してしまう人がいるのですが、それをやると細胞が壊れます。腐敗は止まるかもしれませんが、細胞は壊れ、病理検査は意味のないものになってしまうので、冷凍はできません。

どちらかというと冷蔵をしてください。できるだけ早く。

剖検をやっている動物病院もありますが、すぐ預けて解剖から病理検査まで任せられることもあります。

しかし、普通は剖検を依頼したい人の冷蔵庫で、剖検の受け入れ先を見つけるまで保管することが必要です。

専門家への依頼方法

次に剖検してくれる専門家を探します。虐待を疑うのであれば、まずは警察と保健所などの行政に相談します。

警察が事件性が疑われると判断した場合、警察が剖検を依頼します。

発見者が法獣医学の専門医に直接依頼をすることはできません。

これは、法獣医学会の方針です。

「日本法獣医学会」では、原則的に動物行政および警察署からの要請に対応します。これまでの動物虐待に関わる主な問題点として、動物虐待が疑われる場合の調査手法や評価が不明瞭ということが挙げられています。動物虐待等に関わる事例を蓄積し、動物虐待の分類、関与因子、地域性、因果関係を統計疫学解析することにより、日本での動物虐待の実態調査を行うことも目的としています。

日本法獣医学会HPより

と書いてあります。簡単にいえば、普段の様子がわからない動物を、一般人が虐待と考えただけで依頼されても、調査のちの字にもなってなくて、到底司法解剖をする価値を生み出せないよって話です。

ここでいう一般人っていうのは、街の普通の動物病院獣医師も含まれます。

まちの獣医さんに相談すれば、あ~虐待かも。とか、これは虐待じゃないよなんて相談に乗ってくれる先生もいると思います。

ただ、それは親切心であって、列記とした調査をもとにした発言ではないんですよ。

こんなこというと「じゃあ虐待じゃないって言われたけど、虐待だった可能性もあるってことか!」とかいう人が出てきそうなんですけど、そうではなくて。

本当の素人ではないので、臨床獣医師の経験を踏まえた意見ではあります。

で、虐待っぽいですねとなった場合は、街の獣医師もやっぱり行政と警察に相談します。通報義務もありますから。

話を戻しますと、一般の方であれ、まちの獣医師であれ、通報して、通報を受けた警察と行政も虐待を疑う、事件性を疑うと判断した場合、法獣医学会をはじめとする専門家に依頼をかけます。

そして専門家が受けてくれるときまで、遺体は適切に管理していなけらばならないです。

とまぁこういう流れなんですね。

素人でもできること

今説明したのは死因究明までの前半部分。われわれ一般人が動くべき部分のみですが、後半部分も想像するだけでなかなか大変ですよね。

ここまででも知っていれば、SNSなんかですぐ虐待です!という浅はかさが理解できると思います。

というのは冗談で、とにかく死因究明、虐待と明言できるまでの行程は長いんです。

そして最初の遺体の保管がとても大切ですので、この行程を知りもしない一般人が虐待を検挙までつなげることはめっちゃ難しい。

ただ、確かに世の中に身体的虐待はありますし、ひとつひとつ検挙しなければなりません。

そのためにも、全体像をつかんで、SNSで騒いで内で、自分ができることを理解してもらえると嬉しいです。

有意義な通報が、検挙につながりますし、法獣医学の発展にもつながります。

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