前回の瓜実条虫に引き続き、条虫、いわゆるサナダムシの仲間です。
猫回虫がソーメンなのに対して、マンソン裂頭条虫はきしめんに例えられるように、ひらべったく幅の広い白い虫です。
瓜実条虫と同じく条虫ですが、感染経路や駆虫方法は異なることは理解しましょう。
キーワード➡サナダムシ、経口感染、中間宿主、カエル、ヘビ、人獣共通感染症
ポイント
- レア度:★★★
- 感染経路:カエル、ヘビ、鳥類、哺乳類からの経口感染
- 同居猫への感染:なし
- 人への感染:あり
- 症状:★★★
- 駆虫:★★★
感染経路
マンソン裂頭条虫をもったカエル、ヘビ、鳥類、哺乳類を食べることにより感染します(経口感染)。
カエルを好んで食べるヤマカガシ、シマヘビの寄生率が高いようです。
外で生活する猫は、このようこのような動物を食べている可能性があるため、感染する確率は上がります。都会では感染例は少なく、田園風景が広がる地方での感染が多いです。
図にあるように、ケンミジンコ➡カエル➡猫のように2段階の動物を経てようやく猫に感染します。その前のケンミジンコとカエルのような動物を中間宿主といいます。
中間宿主を経由しないと、猫に感染する段階まで寄生虫が成長できません。そのため、猫➡猫へ感染は広がりません。
一応犬にも感染できる寄生虫ですが、カエルやヘビを食べる機会が少ないからか、感染は稀です。
マンソン裂頭条虫の成虫は猫の腸管内で卵を産みます。
つまり、糞便中の虫卵により診断します。
猫へ感染してから卵を産むまでの期間(プレパテントピリオド)は、7-10日です。
人への感染
カエル等を日常的に食べる国だけでなく、日本でも感染例があります。
頭蓋内、脊髄、心嚢内、眼瞼などに寄生した場合、物理的に周囲を圧迫、壊死させて重度な病変を作ることがあるようです。
また、皮下や筋肉に寄生した場合、移動するできもの(移動性腫瘤)を作り、発熱、疼痛などが起こります(マンソン裂頭条虫幼虫症)。
<国内情報>マンソン裂頭条虫成虫の人体寄生の2症例についてidsc.nih.go.jp
北欧では、重度の悪性貧血を起こすことも知られています。これは、寄生虫がビタミンB12を大量に消費することが原因と言われています。
猫の症状
少数寄生の場合、大きな問題にはなりません。
多数の成虫が寄生した場合、慢性的な下痢、粘血便、栄養不良が見られます。同時に、異食や食欲亢進も見られることがあります。
人のように悪性貧血などは見られません。
駆虫
薬自体は一般的な駆虫薬で成虫の駆虫が可能ですが、瓜実条虫の6倍量が必要になります。
よく使われるスポットオン製剤では落ちません。
1回の投薬で駆虫が可能です。
まとめ
田舎では珍しくない寄生虫ですが、駆虫のためには注射や飲み薬が必要です。瓜実条虫や回虫と比べて、体調を崩しやすい寄生虫です。
駆虫しても、外で自由にしている猫は再度感染します。
なにより、猫に狩られるカエルやヘビが可哀想です。猫に狩りをさせないようにしましょ。
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