動物取扱業の規制強化は自らの首を絞める

前回の記事で、第一種と第二種動物取扱業の違いについて簡単に解説しています。

今回は、タイトルどおりそれらの規制によって想定される未来と、現段階で弊害になっていることについて言及します。

音声解説はこちら

想定される未来

第二種動物取扱業者の規制強化

第一種動物取扱業は、もともと届出制度でした。

つまり今の第二種と同じ区分で、誰でも始められる取扱業でした。そもそもその前は届出制度もなく、好き勝手に(今でいうところの)動物取扱業を営んでいました。

ブリーダーであれば、その犬種の会に所属するなどで、ある意味無法地帯ではなかったのですが、法令上は特に制限はありませんでした。

それが届出制となり、登録制となり、今や施設管理基準(ケージの広さや飼育人数、繁殖年齢、販売年齢の制限)が設けられました。

これらは動物の愛護、福祉を考慮され、規制が強化されています。そららを担保するために責任者の設置が義務付けられています。

ひどい業者を淘汰することを目的とし、動物の愛護、福祉向上のために、著名人主体の動物愛護団体が環境省に意見し、加速度的に法改正がなされています。

何がいいたいかと言うと、第二種動物取扱業者も第一種動物取扱業者と同じ規制がかかっても何らおかしくないということです。

現状、第二種にあたる動物保護団体さんは収容頭数ひっ迫、資金もひっぱくしているところが多いと思います。

特に小さな団体は資金が集まりにくく、そもそも運営資金が安定しません。

これ以上、規制強化されると、様々な経費がかさみます。そのダメージは小さい団体ほど重くのしかかり、活動継続困難になりかねません。

まさに、「第一種動物取扱業者規制のつもりが、保護譲渡活動をする者の首も絞める」ことになります。

本当に第二種や個人ペット飼育者まで規制が及ぶか?

第一種と同じレベルの規制を第二種業者にも義務付けられるかと問われれば、僕の答えはNOです。

ここまで力説しておいてなんだよと突っ込まれるのは承知のうえです。すみません。

それでも、NOである理由を説明します。それは

第二種業者が規制を受けると保護譲渡制度が崩壊するからです。

今、殺処分が減っているのはまぎれもなく第二種業者やそれに該当せずとも保護譲渡活動を行っている民間の力があるからです。

そんな保護団体に責任者を置け!と言ってしまうと、活動者は継続困難で減少し、殺処分数は増加します。

これは行政も困ることなので、第二種業者にこれ以上規制はかけることができません。

「悪徳ペットショップをやっつける!!」という意気込みが多分に含まれた法改正で厳しくした規制ですから、同じ規制で慈善団体が同じように苦しむことは想定していなかったとは言わせませんよ。

だから、第二種業者の規制は、今のところ現実味がありません。

逆をいえば、動物取扱業者に要求している動物の適正な管理を、個人や行政には課さないという矛盾をさらけ出しています。

だから、変なのです。だから、簡単な規制強化は反対なのです。

やるなら、一個人の飼育者にも同じ規制をかけるべきです。行政の動物愛護センターも同じ基準でやるべきです。というか行政の施設が率先してやるべきです。

みんな大好きドイツはそうなっていますよ。

飼育施設の基準は、一個人の飼い主にもペットショップにもブリーダーにもティアハイムにも均一に求められています。

守られてなさそうなルール

守っていない団体が一部ありそうと、あくまで私個人の予想するひとつのルール紹介します。

同時に、近い将来これは民間の一般飼育者にも及ぶと困る人が多数いると思われるルールです。

(2) 飼養又は保管をする動物の疾病及び傷害の予防、寄生虫の寄生の予防又は駆除等日常的な健康管理を行うこと。

(3) 一年以上継続して飼養又は保管を行う犬又は猫については、毎年一回以上獣医師による健康診断(繁殖に供する場合にあっては、繁殖の適否に関する診断を含む。)を受けさせ、その結果を記載した診断書を五年間保存すること。

第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令(令和三年環境省令第七号)

あなたは自分のペットに毎年健康診断を受けさせていますか?

健康診断の定義が不明なので、ワクチン接種やフィラリアの予防時に視診、触診、聴診、問診はやっていると思います。

しかし、一般的にはそれは健康診断とは言えないと思います。血液検査してますか?場合によってはレントゲンやエコー検査をしていますか?

そこまで毎年している人、どのくらいいるでしょうか?

動物取扱業者の規制が一般の飼育者まで及んだ場合、毎年健康診断をしなければ動物愛護管理法違反ということになるということです。

その覚悟はあるか?再度自問自答したうえで、規制強化の声をあげてください。

まとめ

動物愛護管理法に限らず、法改正、規制強化とはそういうものなので、仕方のないことのようにも思えます。

しかし、そこを考えずに規制強化を続けると、新たなアイディア、新たな挑戦をも奪ってしまう可能性があることは、規制強化を訴える人は必ず忘れてはならないと思います。

他の法律で「なんて融通の効かない法律なんだ!」と思った経験ありませんか?

それは過去に、規制を強化しろという声が大きくて、民意によって、議員立法によって作られた法令かもしれません。

動物愛護管理法に対しても「なんて規制が強い法律なんだ!やりにくいな~この規制がなければもっと犬猫のためにできることがあったのに。」と思う未来が来てしまうかもしれません。

悪徳業者をぶん殴りたくなる気持ちはわかりますが、いずれそれが自らの活動を制限させられる未来を想像してから、法改正に口を出すことにしましょう。

どうも、某著名人は保護団体にこそもっと厳しい規制を設けたいと考えているようです。保護団体さんで、彼女を支援している人は、本当に自分の首が締まる未来は近いですよ。

法が改正されてから「なんで私たちまで…」と嘆いても手遅れですよ。

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