航空機ペット同伴搭乗は無意味

2024年1月2日羽田空港にて、新千歳空港から来て羽田に着陸したJAL国内線が、着陸直後に海上保安庁の航空機(海保機)と衝突した事故がありました。

JALの飛行機は事故後エンジンから出火したものの、乗務員と乗客併せて379人が無事脱出しました。

まずはJALのCAさんの適切な避難指示と、それに従った乗客を称えたいと思います。

ただ、海保機の乗務員5名は殉職してしまい、とても悲惨な事故になったことは忘れてはなりません。

ご冥福をお祈りいたします。

JALの発表によると、当該航空機では2件のペットの預かりがあったとのことです。

そのペットたちは、今回助けることができず亡くなってしまいました。

この点についても非常に残念です。

これを受けてネット上では、ペットも客室に同伴搭乗させるべきか否かの論争が起こっています。

ペット同伴搭乗の署名活動も行われており、多くの署名が集まっています。

同伴搭乗は無理だ!と決めつけずに改めて「本当に無理か?ひとつひとつ対策したらできないか?」考察してみました。

当院なりに客室同伴搭乗のシュミレーションしてみたのですが、同伴搭乗はいけないことはないような気がします。しかし、とあることに気が付きました。

「客室同伴搭乗が叶っても、意味がない」

そのシュミレーション過程をつづっていきます。

飛行機のおけるペットの扱いの現状

まずJALのペットの扱いについては下記リンクで確認できます。

JALペットとおでかけサービス

以下要約

  • 犬猫、小動物、鳥は機内持ち込み不可
  • 温湿度調整された貨物室でのお預かり
  • クレート1個(哺乳類1匹、鳥2匹まで可)につき4,400~6,600円
  • 犬は狂犬病予防接種済みであること

他の航空会社もほぼ同様のものになります。

ちなみに、小型のカメ、オタマジャクシ、ウーパールーパー、淡水魚、昆虫は機内持ち込み可のようです。

適温に管理はするけど貨物扱いです。ということです。

ペットも客室に乗せられる

ペットも客室に乗せられるべきだ!という意見が出ていますが、国内線に限ったとしても、すでにその方法が少なくともふたつあります。

主張している人はもっと広まるべきという意味かもしれませんが、そもそもそんなに需要があるかが疑問です。

ANA

ANAビジネスジェット

プライベート便なので非常に高価です。

羽田ー札幌間であれば往復で400万円~。

ただ、このあと紹介する他の客室同乗可能便であっても断られるケース、例えばクレートサイズが大きい等でも可能の場合があります。

大型犬と一緒に空の旅をしたい方には、最適解になりえます。

スターフライヤー

FLY WITH PET!(スターフライヤー)

2022年3月27日からペット同伴サービスをスタートさせています。

2024年1月15日からは、スターフライヤーの国内線全線で利用可能になります。

しかも、料金は1匹5万円です。往復で利用しても10万円。

いきなり現実味を帯びてきましたね。

ただし注意点がいくつかあります。

  • 健康が良好やトレーニングが済んでいること
  • 首輪、リード、オムツをつけられること
  • 緊急時等脱出の際は、ペットを置いて逃げる
  • 最後尾の席。脱出は最後。

海外の航空会社

海外のいくつかの航空会社でも客室同伴搭乗が可能です。

バカンス行くときにはペットを棄てていく(イメージのある)フランスのエールフランスが同伴とは意外でした。(余計な一言)

スターフライヤーのように、脱出時は置いていくことという明記もされていない場合もあるようです。

いけるかもしれないし、ダメかもしれない。その時にならないとわからないようです。

それに掛けるかどうか…

個人的には、この曖昧な基準は一番危険な気がしています。

荷物じゃなくてペットとしてお金を払って乗せた!なのに脱出時は荷物扱いで置いていけといわれても納得できない!

と騒いでいる間に、周囲の乗客と乗務員も巻き込んで焼死するのではないでしょうか。

客室同乗の条件

FLY WITH PET!(スターフライヤー)の条件はリンク先から確認していただきたいのですが、私が客室同伴搭乗を考えたときの条件にほぼ一致しました。

考察ポイントは、

  • 特殊空間で動物がパニックになる可能性
  • 動物のコントロールがどの程度できるか
  • 感染症の予防
  • 動物アレルギーの方の発症予防
  • 清掃
  • 場所

人の赤ちゃんは飛行機に乗せることができます。しかし、ペットは基本的に貨物室になります。

人の赤ちゃんとペットには、コントロールが効かないことや、泣いてしまうことがなど共通点があり、赤ちゃんがいても大丈夫ならペットも大丈夫かもしれない。と考えてみました。

人と動物を一緒にするなという意見は一旦置いておいて、フラットな視点で考察してみます。

では赤ちゃんとペットの異なる点は何でしょう。

  • 動物アレルギーの方の存在
  • 動物に対する恐怖
  • 感染症
  • 排泄物の処理

動物アレルギーの方の存在

動物アレルギーを持っている方は少なくありません。その対策をしなければなりません。

スターフライヤーは徹底清掃と空気の循環で対策をアピールしています。

これでどこまでアレルギーの発症を予防できるか明確なことは言えません。結構しっかり対策されているし、軽度のアレルギー持ちの方なら大丈夫かもしれません。

でも本当にひどいアレルギー持ちの方は、スターフライヤーの利用は怖くてできないでしょう。

フライト中にアレルギー発作を起こしたら本当に危険です。

ゆえに、すべての航空会社でペット同伴搭乗可とすることは現実的ではないと言えます。

動物に対する恐怖

アレルギーがなくても、犬や猫が怖い人も少なくありません。

ちょっとした鳴き声でパニックになってしまう人も中にはいます。赤ちゃんの泣き声はうるさいだけですが、動物の鳴き声は恐怖に感じるのです。

それをコントロールために、十分に訓練されたペットのみ同伴搭乗可とするのが吉となります。

これは十分にトレーニングされた子であれば要件を満たすことができる一方で、十分なトレーニングができている証明となるものが曖昧な点については、不安要素です。

個人的な感覚としては、飛行機内でおとなしくしていられるトレーニングとは、ドッグトレーナーにうん十万払ってやるような本格的なトレーニングだと考えています。

素人のしつけではなかなか難しいです。

ペットのクレートを入れる防音室の設置は検討に値するかもしれません。

もちろん、その分料金はあがります。

それくら払う?いや、機体に設置するのですから、ペットを連れていない乗客の航空機代もあがるのですよ。

感染症

狂犬病は人獣共通感染症でもあり、必ずワクチンを実施すべきです。

混合ワクチンは、ペットホテルやドッグラン同様に必須となります。

犬猫以外では、鳥インフルエンザ。鳥へのワクチン接種はできませんので、避けられない課題です。

排泄物の処理

スターフライヤーではおむつ装着を義務にしています。

人の赤ちゃんはおむつをしていて、トイレで交換もできます。

一方でペットはそれができません。

そもそもトレーニングされた犬ならまだしも、猫ができますか?鳥はできませんけど、大丈夫ですか?

オウム君のうんちが、フクロウちゃんの吐物が、全然汚くないし匂いも平気!と思っているのは一部の飼い主さんだけです。

「客室同伴搭乗」主張の真意

ここまで客室同伴搭乗の条件を考察しました。

ただ、やはりスターフライヤーの条件にあるように、客室に同乗できたとしても、今回ような緊急時は横にいるペットを置いて逃げることになります。

想像してください。

炎が燃え盛り、機内がガスで充満してくる熱い中、隣のクレート内でキャンキャン鳴いている愛犬。

怖くて固まっている愛猫。

そのクレートをそこに置いて、あなただけ脱出するのです。

これは貨物室にいるペットを想像して心の中で謝りながら脱出するよりも1000倍辛い気がします。

ということを鑑みると、客室同伴搭乗を!と声を挙げている人は、客室同伴搭乗を求めているのではなく、客室同乗のうえ緊急時は同伴脱出ができるように!という訴えであると考えられます。

同伴脱出の条件

ここが大事なのですが、荷物は持って脱出できないという前提を崩すことはできません。

航空機事故の専門家たちが「荷物を持つと無事脱出、救助できる可能性が下がる」と結論づけていると思われますので、この条件はのむべきです。

自身の脱出の遅れと、他人の脱出の妨げになるというのが大きな理由です。

非常脱出時における適切な対応のお願い【国交省】

細かいことを言えば、両手をあけるべき、狭い通路を通り抜け、滑り台を滑って着地するのに座席や滑り台にひっかかるものは持つべきではない、のようなことだと思います。

要はクレートやキャリーを持って逃げることをそもそも想定してはいけないということです。

抱きかかえて逃げることもできません。

バスや電車では可能なのに、飛行機だけ無理ってどういうこと?という意見もありますが、バスや電車より、通路が狭く、脱出口までの距離が長いのが飛行機の特徴。

その特徴がまさに荷物を持ってはならない最大の理由でしょう。

最後に

客室同伴搭乗を訴えている人の訴えは、客室同伴搭乗ができるようになればいいというものではありません。

緊急時にペットも同伴で脱出避難できなければ、本当に意味のある改革にはなりません。

達成すべきは「ペット同伴避難」です。

しかし、細かい事など一切考えることなく、それは難しいことがわかりました。

更に、今回の事故は空港で発生しましたが、山間や海上への緊急着陸も想定する必要があります。

機内から脱出後、広がる山火事のさらに先へ逃げなければならないかもしれないし、ボート上で何時間も過ごしながら救助を待つことになるかもしれません。

様々な条件を考えた時、同伴脱出、同伴避難のハードルは想像以上に高いでしょう。

それが叶わなければ、客室同伴搭乗の意味は全くありません。

ただ横にいられて嬉しいねという自己満足と言わざるをえないのです。

他人を巻き込む権利はありません。

また、今回のことに限らず、ペットの待遇改善について主張する場合は、犬猫以外も想定して主張して欲しいです。

記事内でも触れましたが、例えば同伴搭乗を考えていくと鳥はインフルエンザが原因でむしろ規制する方向になるかもしれません。

ペットといいつつ、犬猫のことだけよくなればいいという軽率な思考は改めましょう。

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