「手術だけ」では野良猫問題は解決しない ― 3日間で20数匹を全頭捕獲した現場から

https://youtu.be/Yn97voPiFWY

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野良猫の不妊去勢手術は、問題解決に欠かせない大切な取り組みです。

けれども現場に立ち続けてきて痛感するのは、「手術費用さえ補助すれば解決する」わけではないということです。

手術そのものは必要でも、その手前にある「捕獲」や「運搬」という壁を越えられなければ、現場は変わりません。

今回は、依頼を受けて3日間で20数匹を全頭捕獲したケースを通じて、なぜ手術費用の補助だけでは足りないのか、そして行政に何を期待したいのかをお話しします。

依頼者さんが涙して喜んでくれたケース

先日、ある個人の方から依頼を受けて捕獲・手術を行いました。頭数は20数匹。これを3日間で全頭捕まえ、手術までつなげることができました。

すべて捕まえ終えたとき、依頼者さんは涙を浮かべて喜んでくれました。「本当に良かった。これでみんな手術できて、これ以上増えなくて良かった」と。この一言に、この仕事をやっている意味が詰まっていると感じました。

依頼者さん自身が餌やりで猫を集めてしまったわけではありません。ご親戚の家で猫が増えてしまい、それを何とかしたいという相談でした。当院は、有料でもかまわないとご依頼をいただいた方・場所に対してのみ、捕獲を行うという形をとっています。

なぜ「一部だけ手術済み」でも問題は再燃するのか

話を聞くと、すでに7匹は手術済みでした。3年ほど前、「このままでは増えてしまう」と考えた方が、近くの手術費用の安い病院へ自分で連れて行っていたそうです。

ところが、それでも問題は解決していませんでした。理由は明確です。捕まる猫から順番にやっていく方法では、どうしても取りこぼしが出るからです。捕まらない猫は必ず残り、しかも捕獲を繰り返すたびに、残った猫はさらに警戒して捕まりにくくなります。結局、手術できなかった猫が繁殖を続け、7匹やってもふりだしに戻ってしまっていたのです。

ここで注目してほしいのは、この7匹を連れて行ったのが、かなり格安で手術をしてくれる動物病院だったという点です。つまり、費用の負担はそれほど大きくなかった。それでも解決できなかったのは、ひとえに捕獲が難しかったからです。今回のケースは、まさに「手術費用が問題ではないのに、問題を解決できなかった」代表例だと言えます。本当に解決したいと願ってお金を用意していても、それだけでは解決できない問題は確かにあるのです。

これは今回のケースに限った話ではありません。中途半端に手術を進めると、残った猫の繁殖で数はまた元に戻ってしまう。 だからこそ、たとえ全頭が難しくても、8割・9割は手術しきる必要があるのです。

「擦れた猫」を3日かけて捕まえきるまで

今回、私は最初から難しいケースになると覚悟していました。3年間にわたって捕獲圧がかかっていたため、以前からいる猫たちがすっかり警戒心を強めて「擦れて」いたからです。

実際、1日目に捕まったのは、すでに耳カット済み(手術済み)の猫ばかり。本命の猫たちはしばらく離れてしまい、その日は家に戻ってきませんでした。それでも2日目、3日目とかけていくうちに、少しずつ戻ってきたところを捕まえられるようになりました。

正直に言うと、3日目は追加料金が発生することも見積もりと合わせてお伝えし、依頼者さんも一度は諦めモードでした。残り3匹は「少しずつ慣らしてやっていきましょう」と、いったん区切りをつける流れになっていたのです。ところが、捕獲機を回収しに行くと、本命の猫たちが戻ってきていた。「今なら捕まりそうですが、どうしますか」とご相談したところ「ぜひやってください」と。こうして、無事に全頭を捕まえきることができました。

行政に期待したいのは「手術費用以外」の支援

私が以前から繰り返し発信しているのは、手術費用の補助だけでは野良猫問題は解決しないということです。

手術費用の補助を出す自治体は、確かに増えてきました。それ自体はありがたいことです。しかし、手術がたとえ0円でできても、問題が解決しないケースは少なくありません。 なぜなら、大きな壁になっているのは手術費用そのものではなく、その手前にある「捕獲の技術」や「捕まえた猫を一気に手術できる病院の手配」といった、費用以外の部分だからです。

誤解しないでいただきたいのは、手術費用の補助や、どうぶつ基金さんの協力病院での「ほぼ無料手術」が悪いという話ではありません。捕獲も運搬もできる、時間もある。あとは手術費用だけがネック――そういう方にとっては、これ以上ないほどありがたい支援です。問題は、その補助「一辺倒」になってしまうこと。手術費用だけを補助しても、お金以外の問題はやはり解決できないのです。

もちろん、「手術費用がハードルになっているケースが多い」というご指摘はその通りで、その意味で助成金は確かに有効です。ただ、あらためて考えたいのは、手術費用「だけ」がネックになっているケースは、本当にそんなに多いのかということです。捕獲も運搬も時間の問題もすべてクリアできていて、あとは手術費用だけ――そんな理想的な状態が整っているとしたら、そのほとんどは、愛護団体さんが手術以外の部分を自費で頑張ってクリアしてくれているケースではないでしょうか。

つまり、行政の手術費用補助がうまく機能しているように見える裏側では、費用以外の重い部分を誰かが持ち出しで負担している。その構造そのものに、改善すべき点があるというのが私の主張です。

この費用以外の重い部分を、多くの愛護団体さんがほぼボランティアで担ってくれています。頭が下がる思いです。ただ、そのボランティアに頼りきった野良猫対策になってしまっているのが、手術費用だけを補助する行政の現状ではないでしょうか。ボランティアさんの善意に「おんぶに抱っこ」の状態で、「手術費用を出しているから対策はやっています」とは、正直言い切れないはずです。

なぜ手術費用は補助されやすく、捕獲・運搬は補助されにくいのか

ここには、行政の仕組み上の理由があります。手術費用は目に見える、確実に数字が出せる費用です。だからこそ行政は助成金・補助金を出しやすい。反対に、ボランティアさんが担っている捕獲や運搬といった部分は、数字として示しにくいのです。

実際、これまでTNRのお手伝いや地域猫活動を続けてきた保護団体さんや個人の活動家さんに、「今回のケースで手術以外にいくらかかりましたか」と聞いても、ぱっと答えられる方は少ないと思います。そして、その金額を即答できなければ、行政もそこに補助を出せないのです。「聞かれればきちんと計算してお出しします」というスタンスでも悪くはないのですが、行政はそこまで待ってはくれません。

だからこそ、私はあえて有料で、毎回きちんと見積もりを出して金額を明示しています。おかげで「このケースは捕獲・運搬など手術以外の費用でいくらかかりました」と、すぐに数字で答えられます。普段からこうして費用を可視化して考えておくことで、万が一そこまで補助しようと考えてくれる自治体が現れたとき、話が一気に進みやすくなる。これも、私があえて有料で活動している理由のひとつです。

参考になる取り組み ― 滋賀県の「まるっと」補助

一方で、良い取り組みだと感じる行政の例もあります。滋賀県の多頭飼育対策の補助金です。

大まかに言うと、多頭飼育が難しくなってしまった現場について、猫の捕獲・運搬から手術費用まで「まるっと」実施してくれた方に助成金を出すという仕組みです(詳細は滋賀県のホームページ等でご確認ください)。今回のように、私が捕獲と運搬を担って費用をいただくような部分も、補助の対象になり得るイメージです。飼育者本人にではなく、実行する団体側に補助を出す形だったと記憶しています。

こうした、手術費用だけでなく捕獲・運搬まで含めて支えてくれる行政が、もっと増えてほしいと願っています。そもそも、多頭飼育崩壊や野良猫問題が起きてからの解決費用は「予防」にはなりません。本音を言えば、行政はむしろ予防措置のほうにこそ予算を割くべきだとも思います。ただ、すでに起きてしまった現場に対しては、費用以外の部分まで支える仕組みが不可欠なのです。


「手術だけ」で終わらせない。 現場を本当に解決に向かわせるには、捕獲・運搬まで含めた支援と、取りこぼしを出さない全頭捕獲の技術が欠かせません。猫の多頭飼育でお困りの方、地域の野良猫問題にお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

やまがた不妊去勢クリニック(千葉県茂原市・柏市)
ブログ:https://y-snc.com/blog-2/

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