予防は理解されにくい、解決はわかりやすい。

当院がやっている活動は、基本的に予防です。

私たちの活動により、多頭飼育崩壊を防止したり、猫による被害を縮小したり。

ただ、予防業務というのはこの分野に限らず得てして理解されにくいものです。

「予防」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?

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予防が浸透している分野

一般的な動物病院業務の半分は予防業務です。ワクチンやフィラリア駆虫薬など、予防が重要なことは多くの飼い主が理解していて、実施しています。

人の医療でも同じです。最近は反ワクチン派も一部いますが、大部分の人が率先してワクチンによる病気の予防を率先して行っています。

医師や獣医師を中心とした医療従事者の注意喚起の賜物です。

何度も何度も同じ説明を丁寧にして、飼い主に受け入れてもらい実施することはとても大変ですが、それを根気よく継続してきた先輩方のおかげで予防への理解度が高まり、現役世代の啓発により高い予防意識が維持されています。

「予防」というよるとワクチンやフィラリアを思い浮かべる人が多いと思いますが、まさにそれがワクチンの理解度が進んでいる証拠でしょう。

わかりやすい解決劇

ただ、世の中には予防が重要と理解されているケースの方が少ないかもしれません。

多頭飼育や不適正飼養から動物のレスキューは画になりますし、応援されやすい活動です。

特にメディアで報道される活動はとても画になるか、感動を呼ぶかでないと話になりません。

可哀想な猫を保護して幸せになるシェルターを作る!というクラファンには支援が集まります。

これらはすべて「起こった問題を」解決する活動です。問題が起こった結果、かわいそうな動物ができます。つまり、可哀想な動物が発生しないと活躍できない活動です。

もちろん解決の活動がよろしくないと言っているわけではありません。解決するための活動も大変ですし、今の段階では絶対に必要です。

「何も起こらなかった」が理想

一方で、多頭飼育や不適正飼養にならずに止める活動は理解されにくいものです。

なぜならこの予防活動が成功した場合、「何も問題が起こらなかった」ということになるからです。なんのニュースにもなりません。報道するような画にもなりません。わかりやすい感動劇もありません。

例えば、当院は飼育崩壊を起こしそうな飼い主の元へ通い、崩壊しないためにできることを助言、説得します。うまくことが進めば、飼い主が死亡、入院、入所しても動物が置き去りにならないように対策を誘導できます。

この飼育崩壊予防の成功は、ニュースにもならなければ一般の人の目には止まりませんので、知られることも、まして活動が大きく評価されることもありません。

しいていうなら、飼い主に関わっていた福祉従事者、近隣住民、時には飼い主本人から感謝されるだけです。(それだけでは不十分という意味ではない)

当院は市町村行政や地域包括支援センターを中心に、福祉事業者さんへ挨拶回りをしています。

以前ブログやYouTubeで話したことあると思いますが、挨拶回りをしていてよく言われることがあります。

「飼い主の入院入所の時、ペットを引き取ってくれるの?」

この質問が出る理由はわかっています。ふたつあります。

そういう保護活動者がいることを知ってるからです。動物保護団体が保護することはイメージできるからです。

保護を依頼する理由は、入院入所して置きざりにされた動物たちを助けてもらうことで、解決できると思っているからです。

解決できる「と思っている」という表現が気になった方は、以前のブログ記事『動物を引き取らない理由』も読んでいただけると、理解が進むと思います。

不適正飼養、福祉現場での動物において、重要なのは崩壊の予防です。殺処分ゼロでいうところの蛇口を閉める活動です。

それはどうやって達成させるのかをイメージできないので、引き取ってくれるの?という質問がでます。

これは仕方のないことなので、予防の重要性とその価値と、それを実現する当院の活動を説明してまわっています。

予防の重要性が理解できない行政は、厳しい

挨拶回りをしていると、「動物の件があったら愛護センターに相談してるんで。」とか、「保健所に任せてるんで。」と冷たくあしらわれることも少なくありません。めっちゃ辛い(笑)営業マンって大変ですよね。。。

「え、で?それで解決したことありました?」

と聞きたい気持ちを抑えつつ、

「行政にしかできないことがあるから、協力を仰ぐのはいいことですね。でも行政でできないことも多いので、そこをサポートできるように当院を立ち上げたんです。なにかあったら相談してください、使ってください。」

と説明します。

しかし、それがなかなか理解していただけない。

行政、特に福祉や動物、環境の業務は予防業務が多いのですが、そんな予防業務に携わっている方でさえ、予防への理解度が低いのは結構辛いものがあります。

もちろん見知らぬ民間人がいきなりやってきたから拒否!排除!という部分があるのはわかっています。

それにしても、自分で言うのもなんですが、やまがたを手札に持っているといないでは課題に対してできることに雲泥の差が出ます。これは自信を持って言えます。

常に問題に向き合い、本当に住民や支援先のためにできることを考えている方であれば、手札を増やせるだけ増やすにこしたことはないと思うのですが、それを面倒と思う行政マンの多さには肩を落とします。

いや~世の中の営業マンもこういう想いだと思います。営業マンってすごいですね(2回目)。

挨拶回り(営業)とは言え、当院は現在完全無償協働なので営利目的企業の営業とは違います。

今の時代、行政だけで予防解決できるような問題はむしろ少なく、官民連携の重要性は全員わかっているはずです。そんな時代に民間とは協働しない姿勢を貫く行政は、組織としてかなり痛いと言っても過言ではないのでは?

これは完全に余計なことですが、本気で問題に向き合って行政が住民にできることと連携必至の部分を考えているような優秀な方がどんどん離職するのは当然と言えます。

まとめ

最後は行政の体制への不満みたいになってしまいましたが、行政職員も、福祉従事者も、そしてそれ以外の方も、もっと予防業務の重要性を理解していただくために、当院は日夜活動しています。

ぜひ、ご理解いただける方は応援のほど、よろしくお願いいたします。

連携してみようかなと思った行政、福祉事業者さま、ご相談おまちしています。

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