スペイはインフラ整備

『スペイ(不妊去勢手術)はインフラ整備』

この言葉は、大阪のHappyTabbyClinicの橋本恵莉子先生の言葉です。

先日の橋本先生との対談をYou Tubeにあげています。

橋本先生との対談

この対談の深掘りを数回に分けてしていきたいと思います。

音声解説はこちら

タイトルの言葉、元々はこの対談前のシンポジウム内で橋本先生が発した言葉です。

このシンポジウムはペットと防災のシンポジウムでして、防災対策におけるスペイ手術の役割という内容で橋本先生が講義をしていました。

講義内容を簡単に説明すると、大災害の後に残された犬猫が野良化して増えてしまうことがあります。

それを予防するために、野良猫はもちろん、室内飼いの犬猫も去勢しとこうねということで話されてました。

ご存知の方多いかもしれませんが、東日本大震災や熊本地震等、大きい災害の後は野良犬猫問題があります。

特に東日本大震災の時は立ち入り禁止禁止区域等が設定されてしまったので、その区域内で人の手を入れることができず犬猫が野良化して繁殖するという問題があります。

これはもう野良猫だけを手術していても予防できる問題ではないです。

震災時に逃げ出した飼い犬や飼い猫も野良化して繁殖してしまっているので、飼い犬猫も含めて手術することは、もはや災害対策の 1 つとしてインフラ整備やという風に橋本先生はおっしゃっていました。

個人的には大きく出たなと思って結構衝撃的でした。

なので対談の冒頭にこのお話をさせていただきました。

補足とやまがたの所感

震災後の野良犬野良猫問題は、路頭に迷い、餌もなくて、厳しい環境で生きることになった犬猫がかわいそうという理由がひとつ。そのかわいそうな犬猫をなくしたいっていう意味合いで橋本先生も話していたんだと思います。

理由はもう 1 つあると私は考えています。

感染症対策です。

感染症の中でも狂犬病が筆頭です。

昭和 28 年に狂犬病予防法が制定され、野良犬相当作戦ということで野良犬の片っ端から捕まえて殺処分されていました。

野犬を減らしてワクチンを義務化することによって、ようやく日本は狂犬病正常国になることができました。

超貴重で守るべき正常国です。今の安心して犬が飼える日本があるのはこのおかげです。

しかし、震災後野良犬猫問題により、野良犬がめっちゃいる環境を作ってしまうことは、狂犬病正常国でなくなるリスクが、グンと上がると思います。

そういうところまで考えると、まさに「スペイはインフラ整備」って言葉が大げさとは言えなくなります。

当院の課題

当院は飼い猫の手術の依頼は端的に言えば断っています。完全な飼い猫は。

ショップで買いました、ラグドールです!みたいなのは、他の病院をおすすめしています。

野良猫を保護して飼いますみたいな、外猫を減らして幸せにしてあげるということにつながる場合は喜んでやらせていただけますけども。

理由は何個かあります。

大きな理由の 1 つとしては、かかりつけ動物病院を持ってほしいということです。

うちは立派な病院ではありません。 手術専門でやってる病院なので、検査機器もほとんどないですから、何かあった時に検査したりできません。

完全な飼い猫はこれから何年も一緒に生活していく中で、何かしらあった時に対応してくれるかかりつけがないと、結局困るのはそのペットであり、飼い主さんであるので。

去勢手術は最初に病院にかかるきっかけとなる大切なイベントだと思います。

近くの病院に行って、どういう先生がやってるとか、そういうのを見ながら信頼できるかかりつけ病院を見つけるチャンスなのです。

そのチャンスをつぶしてしまうことになるので、そういう意味で断っています。

ただ今回スペイはインフラ整備というのと、その後橋本先生と話していて考えていたのですが、

僕が断った人、安い手術を求めてきた人は、僕が断った後に他の普通の動物病院で手術してくれてるのか?というのは疑問です。

これでいいのかなというのはずっと考えてきました。

先日も3 年前に保護して、それまで一度も病院かかったことない方から依頼がありました

そういう人に、かかりつけを見つけてねと断っても多分手術せずにいりと思います。

そうなると手術していない飼い猫が増えてしまう。

室内飼育犬猫は手術するかしないか自由だと思います。

飼い主さんの自由だと思いますけど、最初の話に戻って災害の時を考えると、やっぱり室内飼養でも手術はすべきだと思います。

そこまで考えると結果的に飼い猫は断る当院のスタンスも再度考え直さなければならないと思います。

商売上はもちろん受けた方がいいんですけどね。

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