優秀な行政職員

「多頭飼育の現場でどうぶつ基金の協力病院を使って去勢手術が無料でできるのはありがたい。けどそれを愛護活動家がどんどん進めた結果、本人はなんの痛手も苦労も負わずに手術が完了してしまう。そのせいで本人はまた猫を集めてしまう事態は避けたい。根本解決にならない。」

と、ぼやく市職員さんがいました。

以前から顔は知っていたものの、うちにどしどし相談してくれるような方ではなく、恐らく私の発信を幾一チェックもしているわけでもないと思われる市の職員さんです。

そんな一般事務職の職員さんからこんな言葉が出るとは、脱帽です。

実はこの市は、一般市民の動物愛護活動家からどうぶつ基金の行政枠を取って欲しいとの要望がありました。議員を通しての要望もあったようです。

そもそもこの市から車で行ける範囲にはすでにどうぶつ基金のチケットが使える、つまり無料で去勢手術をやってくれる動物病院があります。

基金のシステムについて私は詳しくないのですが、行政枠を取るともっと多くの猫の無料手術が手軽にできるようになるらしく、行政枠を使いたいという愛護活動家からの声は全国で挙がっていると聞きます。

しかし、行政枠を申請したくない行政も多いです。

その理由は、「動物のためになにも動いてくれないダメ組織」というわけではないのです。

そのような行政がないとは言いませんが。

行政枠利用に動かない理由

「無料手術で解決しないことを理解しているから」と考えた方が腑に落ちませんか?

ダメ行政と決めつけて、議員を使って動かそうとしている動物愛護活動家の方々、それでは逆効果です。

無料や安価で去勢手術ができると、何がどうなって、最終的に、誰が得して、行政目線で価値が生まれるか?

もう一度考え直してみてはいかがでしょうか?

無料手術の弊害』は、以前ブログ記事にしています。

https://note.com/ysnc/n/nfc83d0c83ed6

その内容を理解している、想像できている行政マンは少なくないかもしれません。一般事務職員でもそこまで想像できています。

動物関連の職員なら、ほとんどの方が理解しています。

だから、行政枠を取ってくれ!の要望が通らないのです。

スぺイクリニックも同じ

先ほどからずっと基金の行政枠と言っていますが、どうぶつ基金に限った話ではありません。

安価なスぺイクリニックも同じです。もちろん、当院も同じです。

手術は手段のひとつです。手術は問題解決のための一点の通過点でしかありません。

TNR+M(マネジメント)ができないと、意味がありません。

解決へ向けた活動主体は多頭飼育者本人、エサやり本人でしか成功しません。

動物愛護推進員、動物愛護活動家はあくまで支援です。

過度な支援は自立を妨げます。

だからうちはトータルコーディネートにこだわっています。改善する気がない本人に安価で手術を提供なんて絶対にしません。

やった方が売り上げは上がりますよ。薄利多売の商売なので多売しなければならないです。

どんどん手術して、全然解決しない方がもうかりますよ。ずっと手術しなければならない猫が産まれ続けるんですから。

でも多売の弊害は結局人と猫に戻ってきてしまうのがわかっているからやらないです。

優秀な行政職員は少なくない

このような蛇口を閉めるという意識は、私たち専門家だけでなく一般行政職員にも浸透してきたのは嬉しい限りです。

無料手術の弊害の解像度が高くなくても、本当に手術が無料でできるだけでこの問題が解決するのか?と疑って思考を巡らせている行政職員は少なくないでしょう。

実際に失敗しないと無料手術だけでは意味がないことの解像度は高まりません。ただ、行政は実際にやってみて失敗することもできません。

そういう行政職員さんに読んで欲しい当院のブログです。

ブログ読むのが大変な方は、YouTubeでも構いませんし、直接ご相談いただいても構いません。

根本解決を目指して動く優秀な行政職員さん、ぜひお声掛けください。

オンラインケア会議でも相談を受け付けています。

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