近年、飼い主のいない猫対策事業を行政、そして場合によっては獣医師会が協力して実施しているケースが増えてきました。
千葉県も何年も前から実施しています。
自治体や獣医師会が重い腰をあげて飼い主のいない猫対策事業に乗り出したにも関わらず、その腰を折るような態度をとってしまう動物愛護団体というのがいます。
今すぐそれをやめてくれ。
今回はそんな話を耳にしたので、愛護団体はどういうことを考えて行政や獣医師会との協働をすべきかについて書いていきます。
否定から入っても何も生まれない
せっかく野良猫対策をやろうとしている組織に対して否定から入るとは、どういうつもりなのでしょうか。
そんなことでは行政も獣医師会もやらなきゃよかったとなります。
そのような団体、つまり地域猫やTNRや保護譲渡を長年やっていた人は、おそらくスぺイクリニックを利用して活動されてきたのでしょう。
だから、スぺイクリニックのようにやって欲しいと願う気持ちはわかります。
でもそれは無理です。
これからひとつずつ説明していきますが、それを読めば理解できると思います。というかこんなこと私が発信しなくても少し考えればわかるはずです。
それを想像することなく、自分の思い通りにいかないからと否定をしないでください。
獣医師会を理解する
獣医師会に加入している動物病院は、野良猫対策事業の素人です。
強い言葉を使ってしまいましたが、これは批判しているわけではありません。別分野なのです。
獣医師会加入病院というのは一般診療を行う動物病院です。
一方でスぺイクリニックは加入していないことがほとんどです。
これについては、また別の機会に記事にしようと思いますが、今回は一旦置いておきます。
要は、獣医師会加入病院は個別診療をしている先生の集まりであって、群管理は専門分野ではないのです。群管理は知っていても、野良猫対策の背景や、行政の意思、地域の課題などまでは理解していません。
私に高度医療はできないのと同様に、獣医師会の先生には野良猫の対策はできないのです。
同じレベルで比べるなと批判の声が聞こえてきそうですね。いや、猫対策事業というのはそれくらい専門性の高い分野だと考えています。
なので、一般動物病院獣医師ができないのは仕方のない事なのです。
それでも獣医師会は公益社団法人として公益性のある事業にチャレンジしてくれています。
加入獣医師は会の意向に賛同して参加してくれます。
まずこの点を理解してください。
先日、福祉事業者の勉強会で講師をしたときに「いわゆる町の動物病院さんにも協力をお願いできるのでしょうか」という質問があがりました。
回答は「できません」です。
これは野良猫ではなく福祉現場の動物問題についての質問でしたが、理由は同じです。福祉現場で何が問題になって、どういう背景があるからうまくいかなくて、どうしたら活路を見出せるのか。それは一般の動物病院の先生にはわかりませんよね。
質問者は遠方から勉強会に参加してくれていたので、私に相談したいけど遠いから近くに獣医師も相談に乗ってくれるといいなと思って質問してくださいました。
獣医師会を育てる
以前ふなねこさんの地域猫セミナーで「行政を育てる」というワードが私に突き刺さったという話を記事にしました。
同様に、これまで散々野良猫の活動をしてきた愛護団体さんには、獣医師会を育てる気持ちで教えてあげて欲しいです。
最初から野良猫に長けたスぺイクリニックと同様のものを期待しないでください。
「野良猫対策に関しては素人だけど去勢手術はできるから、自分にできることを提供して公益事業に貢献したい」という気持ちを持ってこの事業に協力してくれているのです。
その獣医師会の先生を批判するって、どういうつもりなのでしょう。
詳しくは言いませんが、今回は行政と獣医師会側に落ち度がなかったわけではありません。
いや、事業内容に落ち度はなかったけど、若干説明・すり合わせ不足があったのかな?
それが獣医師会の先生にとても不快な思いをさせることになりました。
打ち合せの場で、愛護団体の方が協力獣医師を大批判するという最悪の形で。
その先生、よくその場でキレなかったなと思います。
デメリット
事業協力に手を挙げてくれた獣医師を否定するのは辞めろと散々説明しました。
愛護団体全体へのイメージ悪化により、協力獣医師がどんどんいなくなるからです。
今回の私に相談してくれた先生もまだ若手で、これから自分の診察と併せて公益事業に参加してくれようとしているにも関わらず、今回の件でもう嫌になっています。
ひとつの団体、ひとりの愛護団体の方が、すべての愛護団体のイメージを悪化させてしまったのです。
本当にちゃんとやっている愛護団体に迷惑です。
絶対にやめてください。
行政もなんでこんな団体と仕事してるのだろうと思いはしましたが。行政は行政で難しい部分ありますからね。公平性が大好きな行政、どの団体も公平にということで。
その先生は繰り返しこう言っていました。
「もう愛護団体と絡みたくない。」
続けてこうも言っていしました。
「先生、よくその仕事できますね。俺には無理!」
なんて答えたか気になりますか?
「俺は付き合う団体選んでるから」
メリット
獣医師会は苦手な分野にも関わらず協力しようと重い腰を上げました。
行政も新しいことをやるのが苦手な組織です。にも関わらずやろうとしています。
そのような組織を育てる気持ちで接した先に何が起こるか。
色々うまくいかないことが発生して、民間のスぺイクリニックやどうぶつ基金を使った方が思い通りにいくかもしれません。
しかし、協力して事業をどんどん改善していけば、この愛護団体はこんな社会的課題に取り組んで大変な思いをしていたのかと、ハッ気づかせることができるかもしれません。
そして耳を傾けるようになってくれるはずです。
これは何にも代えがたい大きなメリットです。
短期定な事業成功だけを見るのではなく、そのような長期的な目線を持ちたいですね。
自戒を込めて。
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