「手術、来月連れていきます」──そう言って来られなかった方が、今度は「素晴らしい活動ですね、応援しています!」とメッセージをくれた。
嬉しい反面、複雑な気持ちになりました。なぜなら、その方こそが私が解決しようとしている問題の当事者だからです。
「応援しています」と送ってきた方の事情
先日、当院の公式LINEに登録してくださっている皆さんへ、テレビ神奈川の夕方ニュースで組まれた特集動画を紹介しました。
内容は、4年前から私が千葉で続けている活動「人福祉現場に獣医師を」とほぼ同様の取り組みを映した数分間のペット密着取材です。文字では伝わりにくい現場の雰囲気が映像で伝わるため、「私がどんな活動をしているか」をイメージしてもらいやすいと考え、発信しました。
公式LINEの登録者には、手術の予約相談をしてくださる方もいれば、福祉事業所のスタッフさんもいます。手術の相談者については、「猫を増やしてしまった本人」も「実家の親が集めていてどうにかしなきゃと思っている方」も、TNR活動を自分でされている方も、背景は様々です。
動画を流した直後、「見ました!すごい活動をされているんですね」というメッセージが何件か届きました。自分の活動を知ってもらえることはとても嬉しく、応援の声は素直にありがたかった。しかし、そのうちの一通が、私にいろいろと考えさせてくれました。
メッセージをくれたのは、どちらかといえば猫を増やしてしまっている側の方でした。
ただ、うちに連絡をくれているということは、問題を認識していて「どうにかしなければ」と思っているわけです。そのため、もちろん私も協力していました。
改めて過去のやりとりを読み返すと、こんな経緯がありました。
- 5月:「手術に連れていきます」と連絡→お金を使いすぎてしまったとのことで来院できず
- 6月後半に延期:音沙汰なし→体調を崩されていたのが理由
- 今回:「動画見ました!応援しています」とメッセージ
どちらの理由も、責められることではありません。それ自体は責められることではありません。入院や急病など、どうしても無理な理由は誰にでもあります。
でも、その「仕方ない」が積み重なる間にも、猫は妊娠・出産を繰り返す可能性がある。そこが問題の本質なのです。
「仕方ない」で終わらせると、問題は永遠に解決しない
手術を先延ばしにしている方の多くは、遅らせたくて遅らせているわけではありません。
- お金が用意できなかった
- 足(交通手段)がなかった
- 体調を崩してしまった
こういった事情は、本人にとってはどれも本物の障壁です。悪意はない。むしろ「早くやらなきゃ」と思っている。それでも結果として、手術は先延ばしになっていく。
問題なのは、「仕方ないよね」で話が終わってしまうことです。
一度「仕方ない」と受け入れて終わらせると、また同じ状況が起きたとき、同じように「仕方ない」になります。そしていつの間にか、2ヶ月・3ヶ月と時間が過ぎていく。その間、猫は増え続けるかもしれない。
「お客さん」であり「対象者」でもある
今回、私はその方にLINEで率直に伝えました。
丁寧な言葉を選びながらも、「あなた自身が、今私が解決しようとしている問題の根本にいる」という趣旨のことを。
当院に手術を依頼してくる方は、ある意味「お客さん」です。でも同時に、その方に行動を変えてもらわなければ問題は解決しない「対象者」でもあります。
だから私は、ただ手術をこなすことが目的ではなく、その人がどうすれば継続して動けるかを一緒に考えることを大切にしています。2匹ずつしか連れてこられないなら、それでも構わない。成功体験を積み重ねながら、最終的に全頭の手術まで伴走する──そういう関わり方をしたいと思っています。
それでも、こうしてつまずくことがある。歯がゆいですが、それもこの活動の現実です。
必要なのは「仕方ない理由をなくす工夫」
「仕方ない」がある事実は受け入れつつも、その状況をどう乗り越えるかを具体的に考えることが次のステップです。
- 自分ひとりでは無理なら、家族や知人に協力をお願いする
- 足がないなら、当院の送迎サービスや捕獲からの依頼についてもご相談ください
私自身も、相談者ができる限り動きやすいよう、一緒に方法を探すことを意識しています。「どうすれば動けるか」を考えることが、問題の先延ばしを防ぐ唯一の方法だと思っているからです。
おわりに
悪気のある人は、ほぼいません。みんな何とかしようと思っている。でも「仕方ない理由」があると、問題は先延ばしになり、悪循環から抜け出せなくなっていく。
そのループを断ち切るために、私はこれからも現場で伴走し続けます。
もし「猫のことで困っていて、どこから手をつければいいかわからない」と感じている方がいれば、ぜひ一度ご相談ください。一緒に、できることを考えましょう。






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