動物政策監誕生!他自治体が追随するには

港区で2025年度から動物政策監が採用されました。

会計年度任用職員(要は臨時職員)として獣医師を採用して、区に寄せられる動物の相談のサポートおよび指導を行うこととしています。

23区初!とされる動物政策監について解説します。

港区のすごいところ

業務内容は、保健所にいる獣医師が通常担っているものだと予想されます。

公務員獣医師が不足している昨今、保健所で臨時職員として獣医師を募集する試みは全国的に常に行われています。

『動物業務担当の獣医師募集』と募集要項に記載して募集すれば、今回の港区の動物政策監と非常に近いものになります。

しかし、港区の動物政策監は、これと同様の臨時職員ではありません。

おそらくみなと保健所は正規職員が不足しているわけではなく、+1人動物政策監として採用したことになります。なぜかというと、新たに予算を確保し、それを記者発表したので。

これまでと同様の募集であれば、財源は元からある人件費の予算が使われます。

これまでと同様の臨時職員の募集に「動物政策監」とかっこいい呼び名を付けたわけではないのです。

その点、とても先進的な取り組みといえます。

他自治体は真似できない

初代動物政策監は地域猫の生みの親である黒澤康先生が就任されました。

経験豊富な先生にお願いすることができ、港区としては大成功ではないでしょうか。

「わたしの地元の自治体でも動物政策監制度をやればいいのに!」と思う方、愛護推進員さん中心に大勢いると思います。その気持ちは十分理解できますが、おそらく港区同様うまくいく可能性は低いと考えます。

本当に適任の獣医師が少ないからです。

獣医師であれば応募可能で、今回の港区にも何人かの応募があったと思います。

その中に動物行政の経験豊富で、本当に自治体の、地域の力になることができる獣医師がいると思いますか?

勿論公募しないことにはわからないです。でもその確率は低いでしょう。応募者の中にいらっしゃったとしても、黒澤先生くらい有名な人でないと見抜けない可能性も大いにあり得ます。

実は他部局でも結構あるあるで、専門職を正規で雇うのが難しいから臨時や数年契約で公募かけることがあります。

予算組んで公募かけた場合、いい人がいなくても採用しなければなりません。いても見抜けなくて変な人を採用してしまいます。

結果、何の成果も出せずに無駄だったという形です。

採用される専門職側も、短期間での成果を求められるのでかなりハードルの高い業務になります。

私の勝手な予想ですが、港区の場合、先に黒澤先生に話が行っていたのではないかな…?だとしても公平な審査を経て採用決定したことは間違いありませんけどね。

職員採用ではなく委託がベター

獣医師の職員確保を正規、臨時ともに苦労している自治体がほとんどの令和に、応募が来ること自体が奇跡です。

さらに成果を求めるのは贅沢すぎます。

そんな賭けに出ることなく、もう少し確実な方法で専門家の力を借りる方法があります。

それが業務委託です。

ただ、先述した業務委託のほうがベターだと思います。やはり、しっかりと成果を出せる人に委託する必要があるので、採用面接で見抜けなくて失敗する確率は避けたいからです。

業務委託であっても、変な業者に委託してしまう可能性はゼロにはなりませんが、選抜方法をプロポーザルや指名競争入札形式にするなどの対策は可能です。

個人より、法人(組織)に委託するほうが、より責任も求めることができます。

そんな組織あるんかい!という言葉が飛んできそうですが、あります。

千葉県でやっている、やまがた不妊去勢クリニックといいます。よろしくお願いいたします。

業務委託するためには、予算を組まなければなりません。今回の港区の予算を使って業務委託にすることはできませんが、予算をたてることができることは間違いないので、業務委託にできる可能性もあります。

ここが今回の港区のすごいところであり、まさに私が目指している形です。

パートタイム契約の意味

今回の黒澤先生は、予算額からみておそらくパートタイム契約です。

これなら確かに候補となる獣医師の幅は広がります。私も応募できるかもしれませんので、来期は応募してみようかな。

唯一、臨時職員採用のほうがいい点といえば、担当をひとりに絞ることができる点と予想します。

例えば、法人に業務委託をした場合、とあるケース対応の担当者がコロコロ変わってしまうことが考えられます。

飼い主と信頼関係を構築して初めて助言が聞いてもらえる動物政策監という仕事で、担当者が変わることはかなりのデメリットです。

とはいえ、そんなに担当者複数在籍して動物政策監の仕事を委託できる組織はそもそもないですし、臨時職員として採用した獣医師が変な人のリスクと表裏一体なのですが。

千葉県内の同様の取組み

実は昨年度、同様の動きが千葉県内のとある市でありました。

まさにやまがた不妊去勢クリニックと顧問契約する予算要求を担当課がしてくださったのです。

残念ながら予算はつかず実現しなかったのですが、このような動きが自治体にでてきたことは間違いありません。

他自治体が真似して成功するのは難しいですが、その点を理解したうえでみなさまは声をあげていただければと思います。

まとめ

令和7年度、港区は新たな政策として動物政策監を採用しました。

他の自治体も続け!と言いたいところですが、なかなか現実は厳しいものです。

とはいえ、当院含めできる組織はありますので、行政のみなさま、ご相談ご依頼お待ちしています。

なにより港区と黒澤先生には、この政策やってよかった!港区大成功!ということを見せつけてもらわなければなりません。

応援したいと思います。

次回は、港区の新たな政策のもうひとつ「ペットの保護・譲渡の支援」について考察したいと思います。

関連記事

  1. 犬猫の入手についての調査~ペットフード協会~

  2. 優秀な行政職員

  3. 本気で挑む地域猫活動

  4. 引取り拒否の先にあるリスク

  5. マイクロチップの義務化の是非

  6. 愛護活動の線引き~どこまでやるか~

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP