時代に逆行⁉千葉県犬猫譲渡要領改訂

千葉県の犬又はねこ等の譲渡実施要領(以下、譲渡要領)が2年前に改訂されているのに、今気づきました。

気づいたというより、中の人から教えていただき、知りました。

この譲渡要領には、動物愛護センターで犬や猫を譲渡する際の「決まり事」が書かれているものです。

平たくいえば譲渡条件等がここで決められています。

今回、改訂ポイントが時代に合っていないなと感じる部分があったので、まとめてみました。

音声での解説はこちら

譲渡条件

要領そのものはHP上に公開されていません。(されるべきものだと思いますが、サイト上の該当ページには「情報がありません」としか書いてない。本庁担当課しっかり)

ただ肝心の譲渡条件は愛護センターのページで確認できます。以下引用

  1. 千葉県在住の60歳以下の成人で、親族と同居している方(61歳以上の方及び一人住まいの方は後継人が必要です)
  2. 犬・猫等の飼養管理について、同居する家族全員が同意していること
  3. 集合および賃貸住宅等に於いて、犬猫等の飼養が認められていること
  4. 飼養できなくなった場合、新たな飼養者を確保することが出来ること
  5. 犬猫等を適切に飼養管理できる環境を有していること
  6. センターが実施する講習会を受講出来ること
  7. センターが行う事前訪問調査・譲渡後訪問調査等に協力できること(猫の場合は省略する場合があります)
  8. 関係法令(狂犬病予防法・動物の愛護及び管理に関する法律・千葉県動物の愛護及び管理に関する条例等)を遵守すること
千葉県動物愛護センター(https://www.pref.chiba.lg.jp/aigo/kainushi-bosyu-honsyo.html

一見、譲渡先でちゃんと終生飼養されることを確実なものにするという、現代の厳しい譲渡条件でよさそうに見えます。

しかし、私は矛盾を感じました。その矛盾はこれからの譲渡事業とは逆行していると考えます。

違和感ポイント

時代にあっているようで、あっていないと感じたのは1番です。

60歳以上は基本お断り。

私個人的に、ペットの飼育に一番適している年齢は60代だと考えています。その理由は以下の記事で解説しています。

今の60代は若いです。余命10年以内の、性格がわかっている犬猫を飼うにはこの年代が一番いいんですよ。

更に言及すると、改訂前の譲渡条件は65歳以上お断りでした。

つまりわざわざ譲渡対象年齢を下げたのです。年齢制限を設けること自体はよしとしても、更に低く改訂する必要があったのでしょうか?

県としてしっかりと理由付けされていると想像はできます。

ちなみに後継人がいればOKじゃん!という言い訳は、机上の言い訳でしかないと思います。普通はこの条件を見た60歳以上の方は応募をためらいますし、後継人をつけたり、面倒な手続きをしてまで県から迎え入れようなんて人は稀です。

千葉県の現状

千葉県が譲渡条件を厳しくしている背景として明らかなことがひとつあります。

それは犬猫の収容数の減少です。

適正飼養が浸透してきて、愛護センターが収容する動物数は右肩下がりで、殺処分数も下げ止まりです。

https://www.pref.chiba.lg.jp/eishi/pet/doubutsu/statistics.html

つまり、ほとんどの健康な犬猫が譲渡されています。

といっても、実は千葉県動物愛護センター(本所)は個人への譲渡は実施してません。

ここ数年はすべて動物愛護団体への譲渡です。

千葉県では、動物愛護センターの登録団体さんのみが犬猫を引き出せます。登録団体の活躍は千葉県の殺処分数の低下に大きく貢献しています。ありがとうございます。

これが今の千葉県の現状なので、もし個人への譲渡を再開したとしても数が少なく、譲渡条件を厳しくしても回せるいう判断だったのでしょうね。

県の甘え

見方を変えると、登録団体さんにおんぶにだっこなんですよ。

県が団体の好意に甘えているのが現状です。

正式に業務委託しているなら理解できますが、そうではないはずです。

どこの団体も運営に余裕がない中、甘えていていいのでしょうか。

いつか団体がギブアップしたらどうするのでしょう?

現に、登録団体は16ありますが、実際にセンターの犬猫を引き出してくれているのは主に2つだけです。

そのひとつでも崩壊したら、県は自ら譲渡業務を実施しなければなりません。しかも多数の。

こうなったときに、県は自らの首を絞めることになりうる条件改正だと思います。

お宅訪問

7.センターが行う事前訪問調査・譲渡後訪問調査等に協力できること(猫の場合は省略する場合があります)

千葉県動物愛護センター(https://www.pref.chiba.lg.jp/aigo/kainushi-bosyu-honsyo.html

この項目は以前の譲渡条件に明記されていなかったように思います。ここは評価すべきポイントでしょう。

1件1件の譲渡を慎重に、確実なものにするために設けられた条件であり、民間の保護団体ではもはや常識といっても過言ではありません。

これは、個人へ譲渡する数が少ない(現状0ですが)から実施可能なことです。

矛盾

でもよく考えてください。

1件1件丁寧に時間をかけて譲渡ができるなら、なぜ通り一辺倒で年齢制限を設けた?なんなら厳しくしたのでしょうか?

年齢制限についてはみなさん色んな意見をお持ちでしょうが、共通認識としてあるのは若い70代もいれば、いつ倒れてもおかしくない50歳もいるということ。つまり、一辺倒に線引きしにくいということです。

だから、1件1件に時間をかけてお宅訪問したり、審査をするんですよね。それができそうだから、県は譲渡条件を厳しくしたと考えます。

しかし、それができるならわざわざ一辺倒の年齢制限を設けて更に厳しくする必要はないんです。

65歳の方から申請があれば、年齢を含めてしっかり審査すればいいんですよ。

わざわざ里親になろうとする60歳以上の人を入口で突っぱねる必要はありません。

譲渡数が少ない→譲渡を丁寧にできる→年齢制限なし

ならとても前向きな改正として理解できます。

譲渡数が少ない→里親そんなに必要ない→年齢制限厳しく

こうなってしまったので、

譲渡数が少ない→里親そんなに必要ない→年齢制限厳しく→登録団体減少→譲渡待ち動物増加→里親見つかりません→キャパオーバー

の未来が怖いです。

そうはならない。今の団体に依存している体制が続く確信があるのでしょうか。

確かに千葉を代表する団体ちばわんは安定していますよ。でも、その甘えた状況がいつまでも続く想定で譲渡要領を変更していいのかという話です。

やまがた的改正案

行政のやることだから数値基準などの線引きは必要という意見は、当然あると思いますし、正解だと思います。

それなら、審査基準に数値を入れればいいんです。

例えば、年齢

「60未満→5点」

「60~65→4点」

「65~69→3点」

「70~…」

 … 

留守時間

「なし→5点」

「4時間未満→4点」

「4~8時間→3点」

 …

のように項目を何個も作成して、評価基準を設けるのが吉だと思います。

食品衛生部門ではこのような点数形式が存在しますし、プレゼンしてもらって委託先を決定する場合にも点数をつけて決める制度を行政は持っています。職員採用も同様にすべて点数がつけられています。

なので、制度上できないことではありませんし、公平性を主張するためにも理にかなった制度です。

まとめ

譲渡の年齢制限を厳しく(若く)したことは、時代にあっているようで逆行&矛盾しています。

・ペット飼育に最適な60代を里親候補からはずしている

・丁寧な審査を想定しているなら、なおさら最初から年齢制限を設ける意味がない

・年齢と同等かそれ以上に大切な審査項目があるが、そこに重点を置いていると思えない

このあたりですね。

実は~みたいな裏の事情もありそうですが、いずれにせよ「もったいない」改訂だと思いました。

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