2023年9月23日に兵庫県弁護士会主催で『ペットの流通問題を考える』という市民シンポジウムが開かれました。
兵庫県弁護士会といえばどうぶつ弁護団を立ち上げていることでご存じの方も多いと思います。
シンポジウム前半にどうぶつ弁護団の活動状況報告、朝日新聞記者の太田匡彦氏、俳優浅田美代子氏がそれぞれ講演を、後半は太田氏、浅田氏、そして動物弁護団の細川先生の3名でパネルディスカッションがされました。
パネルディスカッションで挙がった話題について深掘りと私の考えをまとめたいと思います。
普段わたしは動物愛護団体や獣医師、行政職員と話すことが多いので、記者という立場からの太田氏の視点は新鮮なものが多かったです。
なので太田氏の発言を中心にとりあげたいと思います。
取り上げるのは以下の4点を予定しています。
・マイクロチップの義務化
・行政の指導の在り方
・ペット購入時のローン
・崩壊時等の動物の緊急一時保護政策
この記事ではまずはマイクロチップの義務化についてです。
太田匡彦氏の主張
- 太田氏もマイクロチップの義務化には反対の立場
- 超党派の動物愛護議連はこの件は要望していなかった。8週齢規制(犬猫は生後8週齢になるまでの販売禁止)の担保として飲んだ。
- マイクロチップによる事故はないという環境省の見解だが、事故はこれから起こる可能性がある。
太田氏の主張はご自身の記事にも書かれているので参照してください。
https://sippo.asahi.com/article/14338090
マイクロチップの安全性
先の動物愛護法の改訂で、犬猫の販売時にはマイクロチップの挿入が義務付けられました。
義務化までは必要なかったのではないかという意見は、太田氏に限らず、浅田美代子氏も同じ見解のようでした。
マイクロチップの装着は、なんといっても異物を身体に入れることへの嫌悪感から反対する人は多いです。というかほとんどがその理由だと思います。
確かに、その気持ちは理解できます。
一方で、環境省はマイクロチップによる事故はないと主張しています。なので義務化まで持っていきました。
太田氏が事故のリスクを訴えるのは理由がありました。
それは、義務化により大量の子犬子猫にマイクロチップを入れる必要があり、これまでとは異なる施術が行われるからです。
これまでは動物病院で看護師や飼い主が保定したうえで獣医師がマイクロチップを挿入していたので安全性は高かった。
しかしセリ市場で保定なしで挿入している現状を見ると、誤った位置への挿入などによる事故は起こりやすいということだ。
その様子はご自身の記事にも掲載されていたので一見の価値ありです。
https://sippo.asahi.com/article/14338090
確かにこれでは事故が起こる可能性は高まりそうです。太田氏の主張は説得力がありますね。
義務化の必要性
ただ、ものごとはすべてメリットデメリットのバランスによって決まります。
超党派の議連は8週齢規制を主張しながらマイクロチップによる管理を否定していたようですが、これは、一方的な要望に思えます。
個体特定と管理においてマイクロチップが最適だと私は思います。8週齢規制とマイクロチップ義務化はセットでやる必要があるということです。
動物愛護法は、動物の愛護及び『管理』に関する法律です。
愛護だけやるのは片手落ちなのです。
マイクロチップで不正は防げない
マイクロチップによる個体管理、トレサ管理ができます。ということで義務化が法律に載りました。
しかしそこには常に不正との闘いがあります。
小さいうちに売りたいけど、8週齢規制によりそれができなくなった。
でも生年月日を実際のものより早めれば、小さいうちに出荷できてしまうのです。
みなさん想像のとおり、このような不正をマイクロチップでは完全に防ぐことはできません。
人の出生届のように、産院で医師が確認して書類を作成するわけではありませんからね。
そういう意味でこの法律に穴があると主張したい気持ちもわかります。
とはいえ先述したとおり規制ばかりをして、管理する方法を整備しないわけにはいきません。行政の責任として。
またマイクロチップを挿入した証明は書く必要がありますので、それを書く責任というステップを踏まなければならないことで少しでも不正のハードルをあげることにつながるのではないでしょうか。
不正との闘いは課題ですが、この問題はどれだけ時代が進んでも尽きないものです。
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