今年度から飼育放棄ペットの保護、譲渡を受けてくれる動物病院を支援する施策を実施しています。
保護した動物病院には補助金を出すとのことで、予算が組まれています。
動物病院への補助(上限額)
メス 242,000 円/1 頭
オス 234,000 円/1 頭
動物行政としては新しい施策で、高額な補助額です。
制度としてはいたってシンプルですが、これが普及すれば保護界隈の浄化が進むのではないかと期待しています。
港区は動物を引き取らない
この施策のポイントは、港区は動物を引き取らないということです。
通常の行政の場合、引き取り依頼があった動物を引き取り、収容し、譲渡につなげます。
譲渡先は個人もありますが、動物保護団体への譲渡、という名をした保護団体への譲渡委託のような形も多いです。
当然、その保護団体に補助金が出ることはありません。(補助金を出している自治体や業務委託という形を取っている自治体をご存じの方は教えていただきたいです。)
一方、港区のこの施策は保健所が把握した引き取り依頼が来そうなペットの情報を流し、引き取り、譲渡してくれる動物病院を探します。
動物病院は引き取った動物を初期医療にかけ、その費用を港区に出してもらうことができます。
動物病院で譲渡までやるか、譲渡は保護団体に再委託するかは自由かと思われます。
金は殺処分ではなく保護に使え
殺処分ゼロを訴える人から、「殺処分に使うお金を保護活動に充てればいいのに!」という主張は昔からあります。
港区のこの施策は、まさにそれに近いものかもしれません。
通常なら、保健所が負担している引き取り、保管、譲渡コストをすべて動物病院に負担してもらうことができます。
コストとは費用だけでなく、保管場所、時間、人件費を含むため、決して少なくないです。
例えば、携わる人を一人減らすことができれば、その人件費だけで年間数百万円のコスト削減になりますし、この制度のみで余剰動物が賄える日が来たら、収容する施設も不要になります。
動物病院限定
私は妥当だと思いますが、現時点では動物病院限定です。
保護団体にも補助金出せとの声も聞こえてきそうです。
先述したとおり、動物病院が譲渡まで担う必要はないはずで、初期医療終了後、速やかに保護団体引き渡すことが想定されます。
保護団体は費用負担することなく、初期医療と隔離期間を経た動物を受け入れることができますので、そういう意味では保護団体に間接的に補助していると言えます。
ただ、協力してくれる動物病院がどれだけあるのか?は注目したいところです。
業界の自浄作用を加速させる

保護団体が動物を里親に譲渡する際、譲渡金を受け取ることがほとんどです。ただし、第一種動物取扱業者でない組織の場合、実際にその動物にかかった費用で保護団体が一度負担した以上に里親に請求することは禁止されています。
例えば、避妊去勢手術、ワクチン、駆虫の費用で合計5万円かかった場合、譲渡費用として保護団体は里親から5万円受け取っていいということです。
ほとんどの団体は動物病院での医療費≒譲渡費用としていると思います。理由としては、わかりやすいからです。(勿論、医療費以上に譲渡費用を請求している場合も少なくないと思いますが)
譲渡費用としてこれが認められてこれは認められないという厳密な線引きはないので、医療費以外でも実際にかかったその他諸経費を譲渡費用に入れても問題になることはありません。
しかし、ほとんどの団体は、譲渡費用にそれらの管理費を計上していないとおもいます。面倒なので。
猫の運搬の交通費、ボランティアさんに支払った謝礼、保管期間のエサやトイレ砂代などの管理費、里親募集のために利用したサイト利用料などがあります。ここでは管理費とひとまとめにさせていただきますが、管理費は単に保護団体が負担しています。
港区の制度を利用した場合、譲渡費用=医療費という定説を一新しなければなりません。
医療費は港区が負担することになるからです。譲渡費用≒医療費が成り立たなくなります。
医療費以外にかかった管理費を明確にし、それを譲渡費用として計上しなければならないということです。
当然、保護団体は一層資金管理を徹底する必要があります。
港区の補助制度は、そういう意味で業界の浄化を促すのではないかと期待しています。
これまで保護団体が負担していた管理費を里親に請求できることになるので(今でもできるにはできますが、すべて計上すると譲渡に支障が出るレベルで高額になってしまうので現実的ではないという意味)、実質の保護団体に出費が減ることになります。
将来的には、この管理が曖昧なざる勘定、ざる運営の団体がやっていきにくくなる可能性を秘めているのではないかと期待しています。
まとめ
港区の新施策は、保護譲渡をする動物病院に補助金を出すというシンプルなものですが、間接的に保護団体へ補助することになり、てきとーな保護団体にメスを入れる可能性を秘めたいい制度だと思います。
保護団体の資金管理が一層求められることは、手間がかかるという意味ではデメリットです。
しかし、正直使途不明金が多い保護界隈に個人的にはうんざりしているので、本当にしっかりしている団体のみ頑張ってくれると嬉しいです。
この制度に文句をいう団体があるとしたら、団体のデメリットを私が想像できていないか、資金使途が怪しい団体であるということだと捉えていいのではないでしょうか。
この記事へのコメントはありません。