Xでハルユキアイパパさんがおもしろい投稿をしていたので、今回はこの調査について深掘りしたいと思います。
ある意味これだけでは背景を読み取るのは難しいデータという側面があるからおもしろみがあるのですが、読み取り方で全く違う方向に解釈してしまう可能性のあるデータだとも思います。
その点に注意しながら深掘りしますが、あくまで私の推測を多く含む点はご理解ください。
元の調査は日本ペットフード協会が実施したもので、ポストにもリンクが貼られていますがこちらにもリンク張っておきますね。
https://petfood.or.jp/data/chart2023/index.html
該当部分は[生体入手価格]です。
https://petfood.or.jp/data/chart2023/4.pdf
生体入手時の予算
まず、ハルユキアイパパさんがピックアップしているこの項目について。
この調査はこれから飼おうとしている人を対象にした設問です。
犬では58%が、猫では78%が無償譲渡を希望しているとの結果でした。
予算は犬で70%、猫で83%が20万円以下としています。
この結果をみて、タダでもらおうとしている人がこんなにいるのか!という意見をみかけました。
そういう捉え方もできますが、ペットショップで購入ではなく里親になることを希望している人が多いともいえます。
5万円未満と回答した人は、おそらく里親になることを想定しているのではないかと考えられます。
ペットショップでの犬の販売価格は上昇傾向にあるようです。
ただ、販売価格がこれ以上あがれば犬を買う人が減る!というのは少し違うような気がしています。ここは経済の専門家に聞かなければわかりませんが、需要と供給のバランスで価格は変わると思います。
また、ペットショップでよく見かける平均的な価格帯を予算に設定するのが普通の心理だと思いますので、20万円以上で売られている犬が増えれば、予算も併せて上昇すると思います。
要は、この意識調査だけを見て需要の上下は判断できないと考えます。
入手先と価格
次に入手先と価格についての調査結果です。
犬:ペットショップでの購入が多く、価格も上昇傾向にある。
価格の上昇はインフレもあって評価が難しいところです。
無償の割合がガクッと減っていることは、大前提としてN数の大幅な減少があるため、信用できる数値ではないと考えます。
覚えていない層の割合も大幅に変わっていますし。
それを踏まえつつ考察すると、わざわざ無償で里親にならずとも、お金をかけてもいいと考える人は増えたのかもしれません。
この背景には、ふたつの可能性があると考えます。
仮説①面倒な里親審査を経てまでしてシェルター等から譲渡してもらうより、さっさとお金を払ってかわいい子犬を買う人が増えた
仮説②譲渡であっても無償ではなく、有償譲渡が増えた
黄色の枠が譲渡で里親になった人に該当する。(見えにくいですが、青字で合計値を書き足しています。)
1年以内有償譲渡が8.7%、無償譲渡が6.8%。譲渡トータル15.5%
10年以内有償譲渡が6.2%、無償譲渡が13%。譲渡トータル19.2%
譲渡の割合が減っています。仮説①のような里親になることを避ける傾向はあるかもしれません。
10年前に比べると無償譲渡が減り(13⇒6.8)、有償譲渡が増えた(6.2⇒8.9)ように見えます。これは先ほどの仮説②を裏付けるデータです。
この結果からわかるように、検討したが里親にはならなかった人が一定数います。仮説2のケースも少なからずあるでしょう。
猫:里親になることが多く、価格は上昇傾向にある。
猫は犬以上に無償で入手している割合が減少しています。
この背景にあるのは、犬と同様と思われます。
調査元は「ペットショップで購入する人が多い」とまとめているが、これは誤りだと考えます。
拾う人より購入する人のほうが多いのは確かですが、この表現は性格ではありません。猫で一番多いのは里親になる人です。
購入層(赤枠)を「ペットショップから」「ブリーダーから」「知人から」に分けており、譲渡してもらって里親になった人(黄枠)を「シェルターから」「マッチングサイトから」「知人から」に分割しています。
双方の合計値を比較すると購入より里親になる人のほうが多いことがわかります。
1年以内購入層トータル35%
1年以内有償譲渡が15.9%、無償譲渡が20.9%。譲渡トータル36.8%
なので、1年以内の数値では購入35% vs 譲渡36.8%
10年以内購入層トータル22.2%
10年以内有償譲渡が15.8%、無償譲渡が28.6%。譲渡トータル44.4%
10年以内の数値では購入22.2% vs 譲渡44.4% となり、どちらも購入するより里親になる人が多いことがわかります。
更に野良猫を自ら保護して飼う人も合わせると1年以内では60%、10年以内では77.5%にのぼります。
猫は犬より圧倒的に購入するより里親になる人、保護する人が多いというのは、この調査からも見えてきます。
それゆえ、「猫はもらうもの」という考えの人が多いのもまた事実ではないでしょうか。
実際、有償譲渡の割合は増えていません。無償譲渡の割合が減っているだけです。
有償譲渡を増やして健全な運営ができる団体が増えて欲しいです。
生体販売規制の影響
動物愛護法改正を控え、某著名人を筆頭に、一部では生体販売規制を訴える動きが過熱しています。
彼らの主張はあまり注視していないのでどこまでのことを主張しているかわかりかねますが、おそらく優良なブリーダーからだけ購入できるようにしたいのだと思います。
違ったらすみません。
そこで、今どれくらいの人がブリーダーから購入しているか再確認しましょう。
犬は業者のブリーダーと知人ブリーダー併せて1年以内で17.7%、10年以内で18.4%
猫は1年以内で10.2%、10年以内で5%
ですね。犬はブリーダーから迎える割合が変わりません。猫は大きく増加です。
犬はペットショップで購入する層が約25%いて、飼育者の4分の1がペットショップからの購入です。それを規制した場合、更に飼育者数は減ることになります。
猫はブリーダーから購入層は増えてはいますが、自分で保護する人がやはり4分の1近くを占めます。里親になることを含めると7割です。ブリーダーから直接買うことが一般的になるのは遠い未来、いや今のところ想像できません。
この段階でブリーダーからしか買えないモノとしてしまうと、飼育人口は更に減少します。
飼育人口減少は、業界の自浄作用もなくなるし、ペット飼育者がよりマイナーな存在になります。
そうなると、「ペットも家族だ」という主張はどんどん通りにくくなります。マイナーな業界はいつつぶされてもおかしくないことは、想像できますよね?
「ある程度身近で犬が飼える環境」というのは必要なのかもしれません。
身近にブリーダーがいる世界を目指しているのかもしれませんが、それはまた違う課題と問題が出てきますので、なかなか難しいですね。
動物を権利を主張するためには、動物を飼いやすい世界を作り、飼育者をメジャーな存在にしなければならないと私は考えています。
ブリーダー規制、購入・飼育ハードルの高さ維持は、業界全体を後退させます。
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