本気で挑む野良猫対策~TNR編~②TNRの手順

前回、なぜ外猫対策をすべきなのかについて、解説しました。

前回の記事のポイントを必ず押さえてからこちらの記事をお読みください。

でなければTNRは成功しません。


それではいよいよTNRの手順です。
TNRは手術から始まるわけではありません。
まずは管理の徹底です。

次に猫の把握、そしてやっと捕獲手術です。
更に手術後もずっと管理は徹底しなければなりません。ここがTNRはエサやりの免罪符ではないという所以です。

1.管理の徹底

まず、餌の与え方・トイレ管理など、猫との関係性を整理することが最優先です。

  • 置き餌は禁止。目の前で食べさせ、食べ残しは必ず片づける。
  • トイレを設置する。花壇の一角などを活用するのも可。
  • 汚れたままのトイレは機能しないので清掃はこまめに。

これが徹底されれば、来る猫の顔ぶれが安定し、どの猫をTNRすればよいか明確になります。


「ちょこちょこ食べをする猫がいる」という理由はわかります。しかし、1日2回、この時間にしかエサがもらえないとわかれば、猫は学習してまとめて食べるようになります。
「あとから食べにくる猫がいるから」もよく聞く理由ですが、それならその猫が来た時にだけ目の前で与えてください。

これを徹底しなければ、いつまで経っても流れてきた猫が居つく原因を作ります。ずっと外猫問題が続くことになり、終わりのない、つまり意味のないTNRに陥ります。

ずっと置きっぱなしにしていたエサをいきなり短時間で片づけることで、食べ損ねてしまう心配もわかりますが、それによって餓死するほどアホな動物ではありません。
その心配は不要です。

あげるものをあげれば、出すものを出します。
その管理もしなければ、エサをあげる権利はありません。
必ずトイレを設置してください。
設置すれば100%他でしないというものでもありませんが、できるだけ他でしないようにトイレを用意することはエサやる人の義務です。

必ずしも猫用トイレを買ってきて用意する必要はありません。
自分の花壇や畑があるなら、一部を猫トイレ用に整備してあげるだけでも効果はあります。

勿論こまめに掃除をしてください。せっかくトイレとして認識しても、汚れたままでは再度他所で排泄をします。

2.猫の把握

管理を徹底していると、来る猫が決まってきます。
ここでまた不安になる方がいるかもしれません。
「〇〇ちゃんは来なくなってしまったけど、元気でやっているのかしら?」
大丈夫です。少なくともエサの時間が短くなったことだけが原因で死んでいることはありません。
来なくなった猫は、他でエサを食べています。

来る猫が安定しないということは、TNR後もいろんな未手術の猫が来るということですのでそちらを不安視しましょう。

安定して10頭が来ているなら、その10頭がTNR対象です。

3.捕獲・手術

▶全頭一気に実施

安定して10頭が来るならその10頭をTNRしましょう。
全頭、一斉に捕獲手術が鉄則です。
初回でいかに全頭、少なくとも8割以上できるかが最重要です。

「メスだけ」や「捕まった猫から順番に」は著しく成功確率を下げますので絶対に辞めましょう。

▶捕獲は必ず捕獲器を利用

  • 高い成功率
  • 人の安全性
  • 猫の警戒心うすい
  • そのまま運べる

馴れているから手で捕獲できると思ったら大間違いです。猫をなめないでください。
大怪我しますし、猫の警戒心もあがりますし、いいことは一切ありません。

何年も一緒に暮らしている室内飼育のべた馴れ猫ちゃんですら、病院に連れて行く時だけは飼い主から逃げます。

野良猫なら猶更です。

▶捕獲器は猫の数より多く用意すべし

10頭いるなら、10頭捕獲を目指して12個ほど捕獲器を用意しましょう。
私はプロとしてお金をいただいて捕獲を承っていますが、プロの私は必ず多めに捕獲器を用意します。

頭数ぴったりで捕まるほど、野良猫捕獲は甘くありません。素人がプロ以下の数で全頭捕獲できるとは思わないでください。

10頭いれば12個の捕獲器を用意なんて大変!と思いますよね。確かに大変です。なので冒頭でTNRは大変と念押ししました。
でも実はこれが一番大変でなはい方法です。お金も時間も一番少なくすみますし、成功率も高いです。

例えば中途半端な捕獲を実施して半分しか捕獲できずにTNRした場合、2回目は手術済みと未手術の猫が混じった場所で捕獲することになります。
当然、前回捕獲手術してある猫たちも捕まります。

結果的に、目的の未手術猫たちはまた捕まりませんし、捕獲回数を重ねるごとに更に警戒心が強くなり、捕獲しづらくなります。

そんなことをやっているうちに、また出産してしまいます。
これがよくある失敗です。

TNRの効果についての研究を解説した記事を置いておきますが、そちらでは75%以上の手術率がTNRの効果を期待できるとされています。
全頭捕獲手術を目指して、2割捕獲に失敗してもまだ成功できるという意味でも、全頭捕獲を目指しましょう。

4.管理の徹底

TNR後は管理の徹底を継続します。
ここまでやらなければならないというのは、TNRではなく、TNRM「マネジメント」を推奨している方が多いことからも周知の事実です。

手順1で解説したことに加え、流入猫をどうするかも明確に管理する必要があります。


流入猫は、徹底無視または避妊去勢手術のいずれかです。まずは徹底無視が原則です。
最初に決めた猫以外にエサを与えないということです。
流れてきた猫にエサを与えずにいれば、居つくことはありません。

特に繁殖期のオスが来ても、居つく原因がなければ居つかずどこかへ行きます。
見知らぬメスがいきなり子供を産んでいたケースも同じです。見知らぬ猫ということは、他所にエサ場があります。
放っておけば、そっちでエサをあべてある程度育てばいなくなります。

「子猫は可愛いから」、「子猫は捕まるから」、「子猫は里親が見つかるから」といって子猫だけ早々に保護しないでください。
少なくとも2か月は親から誘拐しないでください。可哀想です。
2か月もすれば親と一緒に他所へ行きます。

このように、まずは徹底的に無視が第一選択です。

とはいえやはり気になりますよね。
自分で管理すると決めたならやはりその猫たちもTNRしましょう。

ただ、まずは徹底無視と言ったのは、流入猫の捕獲が難しいことが理由です。

子猫は捕まるかもしれませんが、先述したように早々に親から子猫を引き放すのは禁じ手です。

となると親を捕獲しなければなりませんが、捕獲器を使ってその猫だけを捕獲することは難しいです。

たまたま抱っこできるほどべた馴れである場合のみ流入猫のTNRも選択肢に挙がるいっても過言ではありません。

まとめ

厳しい解説に感じた人も多いと思います。
ただ、うちはこの方法で現場を解決してきました。

いつでもどこでもこの方法でなければならないということではありません。
特に活動を継続して支援してる愛護団体さんなどでいろんなケースを持っていると、このとおりにはできなかったりするケースもあり得ますよね。
最後に取り残した猫の捕獲に奮闘する団体さんたちには頭が下がります。
その苦労を知っているからこそ、今回の記事に理解を示してくれるという面もあると思います。

できることをやる精神はとても大事な一方で、やるなら最後までやらないと無意味になってしまいがちです。

とても大変ですが、きっちりやれば効果が得られる方法、猫に唯一許された方法です。

正しい方法を理解して、猫対策を進めましょう。

さて次回はTNR解説最終回。TNRのエビデンス研究について解説します。

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