ペットを引き取ることが、解決だと思われている限り

福祉現場におけるペット問題認識のボリュームゾーンは、入院・入所時に発生するペットの扱いです。
一方で、動物の専門家である私たちが力点を置いているのは、その前段階、つまり「まだ何も問題が起きていない(ように見える)段階」です。

状況を整理すると、ペット問題は大きく次の三段階に分けられます。

① 要支援者がペットを飼育している段階
② 管理不足が出始める段階
③ 有事(入院・入所、緊急対応が必要な状況)

多くの福祉職の方がペットの扱いに困るのは③の段階です。
そのため、福祉職の期待に応えようとすると、この段階で「ペットをどうにかする」こと、つまり引き取ることが求められがちです。

申し訳ありませんが、当院では③の段階のケースについては対応をお断りしています。
私たちは保護団体ではありませんし、保護団体は他に数多く存在します。

ただし、現実的には、必死に保護団体を探し出したとしても、引き取ってもらえる可能性は決して高くありません
多くの団体はすでにキャパシティが限界に近く、事前情報のない動物については感染症や性格面でのリスクもあります。また、引き取りには一定の費用と時間がかかるため、安易に受け入れられない事情があります。

②の段階でも、すでに問題は顕在化し始めています。
猫であれば多頭飼育、犬であれば散歩に行けない、糞尿処理ができない、健康状態が悪化している──そうした兆候が見られる段階です。

ごくごく少数ですが、②の段階で相談が入ることがあります。
現在、私が対応できているのは主にこの段階です。崩壊の直前、十分に赤信号ではありますが、まだできることは残されています

前回の記事でも触れましたが、私が今介入しているケースのほとんどは②の段階です。
「高齢者だから起きたペット問題」というよりも、すでに多頭飼育状態に陥っているケースが大半です。

今回、改めて強く認識したのは、本当に介入したいのは①の段階だということです。
福祉職の方が「まだちゃんと飼えている」と認識している段階です。まだ青信号だと思っている段階。

あえて「福祉職が認識している」と表現したのは、動物の専門職の視点で見ると、実はすでに②に進行しており、不適正飼育と判断できる状況である可能性も少なくないからです。つまり、すでに黄色信号が灯っていましたということも少なくありません。

「高齢者とペット問題に取り組んでいる」と説明すると、③の段階で動物を引き取る活動だと誤解されることが少なくありません。
しかし、福祉職の皆さまが期待していることと、こちらが実際に取り組んでいることのギャップを埋められて初めて、この問題への協働は動き出します

①の段階で介入すると何ができるのかについては、次回解説します。
福祉と連携し、高齢者とペットの問題に関わること自体は、獣医師でなくても十分に価値があります。

ただ、私は獣医師であり、
「人福祉現場に獣医師を」が合言葉です。
だからこそ、その中で獣医師が果たせる役割と価値について、次回あらためて解説します。

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