みなさん、適正飼養の啓発、していますか?
当院もせっせと啓発しています。行政のみなさんも、動物愛護団体のみなさんも、本当に一生懸命取り組んでいると思います。
それでも、いつまで経っても
「なんだか伝わらないな」
そう感じること、ありませんか?
私は、ずっと感じていました。
今回、とある取材を受けたことで、
なぜ私たちの啓発が伝わらないのか
その理由に気づきました。
中にはすでに気づいていて、意識している方もいると思います。
結論を聞いたら、「そんなの当然だろ」と思うかもしれません。
実際、私自身も改めて考えたら「確かにその通りだ」と思いました。
それでも、あまりにも痛感したので、共有します。
結論から言います。
啓発が伝わらない理由は、
対象者に“自分ごと”として認識してもらえていないからです。
高齢者とペット、というテーマ
今回の取材では、「高齢者とペット」をテーマにしたいという依頼を受けました。
私が普段支援している中から、取材協力が可能そうなご家庭に打診し、撮影許可もいただきました。
いずれも、多頭飼育のケースです。
ところが、同行した番組ディレクターさんから、ハッとする指摘を受けました。
それは、
私が今まさに対応しているケースの多くは、「高齢」であることが主因ではない
ということです。
確かに、当事者は高齢者です。
しかし多くの場合、高齢になる前から不適正飼養があり、
高齢以外の要因も元々抱えていて、
高齢になったことで管理不足に拍車がかかり、問題が表面化している。
つまり、
**主因は別にあり、高齢は「悪化要因」**なのです。
さらに言えば、福祉職の目が入ったことで表面化した側面もあります。
一方、番組として扱いたいのは
「高齢になったことで、ペットを管理できなくなってしまったケース」でした。
なぜ「高齢」を軸にするのか
ディレクターさんが、なぜそこにこだわるのか。
理由を聞いて、私はようやく腑に落ちました。
視聴者に“自分のこと”として捉えてもらいやすいから。
「多頭飼育崩壊だ!」となった瞬間、
多くの人はそれを対岸の火事として見てしまいます。
そうすると、番組が本当に伝えたい
「あなたも準備をする必要がある」
というメッセージが届かない。
他人事には、関心を持ち続けられない。
つまり、視聴者が没頭できる番組にならない、というのです。
私たちの啓発は、逆効果になっていないか
私はハッとしました。
私たちは日頃から、
・多頭飼育の猫屋敷
・散歩に行けず、糞尿が溜まり、健康状態が悪化した犬
こうした「最悪の状態」を見せがちです。
「こんなひどい状況になるんです」
「困るでしょう?可哀想でしょう?」
「だから準備しましょうね」
そうすれば伝わると、信じていました。
でも実際は、真逆でした。
「こんなひどいことに、私がなるわけがない」
「私には関係ない」
そこで、思考は止まってしまう。
行動には、つながらないのです。
どこにでもある日常が、突然壊れることを見せる
なぜ伝わらないのか、ずっと考えてきました。
その答えが、ようやくはっきりしました。
啓発は、
受け取った人が「私も同じだ」と感じ、
明日から行動を変えてもらって、初めて意味を持つ。
極端な事例ではなく、
どこにでもある、平和で幸せなペットとの生活が、
ある日突然、続けられなくなる
そこを見せなければならなかったのです。
綾小路きみまろさんの漫談から思い出したこと
一世を風靡した、綾小路きみまろさんの漫談。
覚えている方も多いと思います。
中高年あるあるの話に、
会場は大爆笑でした。
なぜあんなにウケるのか。
その問いに、きみまろさんはこう答えていました。
「中高年のお客さんは、
みなさん自分のことだと思っていないんです。
“こんなおかしな人がいるもんだ”と、
他人事だから笑えるんです。」
学生だった私は、強い衝撃を受けました。
確かに面白い。
でも、あれを聞いて
「私も同じかもしれないから気をつけよう」
そう思って、行動を変えた人は、ほとんどいなかったでしょう。
啓発も、同じことをしていないか
私たちの啓発も、これと同じではないでしょうか。
漫談ではないので、大爆笑はありません。
代わりに
・「可哀想」と涙して終わる
・「なんて酷いんだ」と怒って終わる
その感情は、とても大切です。
でも、
可哀想と思ってくれたあなたも、
怒ってくれたあなたも、
「自分も同じことになる」とは、伝わっていない。
そこを、私たちは変えなければならないのだと思います。






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