シェルターでの管理方法

うちで猫保護してるケージ見て、皆さん「トイレ小さくない?」と言います。タオルも敷いてあげていないし、シェルターもなくて可哀想。ひどい管理だ…と思っているかもしれません。

しかし、このシンプルさにシェルター管理の本質が詰まってます。

その環境に慣れた飼い猫と、シェルターに入ってきたばかりの猫の管理方法は全く別物です。

多くの猫の保護活動家さんやシェルターを持つ団体では、飼い猫に近い管理をしてしまっているように思えます。

なので、「トイレ小さくない?」と思ってしまいます。

シェルターメディスンとは

日本語に訳すと、「動物収容施設に関わる伴侶動物の群管理に関わる獣医療」となります。「群管理」は、動物が個体ではなく「群」で存在する場所(=シェルター)を意味し、メディスンとは「医療」を意味します。つまり、一般家庭で飼養される伴侶動物に対する獣医療とは異なる環境で動物を保護・管理するという考え方・手法です。

日本シェルターメディスン学会HPより

ストレス負荷を軽減することで、感染症発症を予防し早く馴化してもらうための専門分野です。

群管理とありますが、シェルターメディスンにはストレスをかけない技術が詰まっていますので、1匹であっても迎えいれてすぐの場合など、参考にできることは多いです。

トイレ

トイレは小さいほどいいです。

大きいとトイレを寝床にしてしまって不衛生です。写真の半分程度の大きさ、牛乳パックを半分に切ったやつでもいいとされます。

もっと砂をカキカキ、クンクンさせてあげたいから広いものを!とか、落ち着いた環境でさせてあげたいからドーム型のものを!とかは不要です。そこに隠れて、不衛生&余計に馴化が進みません。

隠れ家は別に用意してあげて、トイレを隠れ家にしないようにしてください。

不衛生なだけではありません。掃除するとき毎回猫を退かす必要があるため、猫にとって大きなストレスになります。

小さいトイレは砂が少ないので、掃除のときは毎回全部変えます。汚れた部分だけスコップですくって…とかはせず、パッと撤収して、砂を入れておいた新しいトイレをパッと設置することが望ましいです。

特に最初の数日はできるだけ猫との接触時間を短くしましょう。

写真の猫は左目がなく、左の視野が狭いので、緊張したときに身体の左側を壁につけるこの体勢になることはケージに入れる前から予想できます。

トイレの上でこの体勢にならないように、トイレは反対側、向かって左側に置いてます。

この辺までくると、シェルターメディスンというより、動物の観察力というか、飼育技術なのかもしれませんが、そういうの関係なくできるのがシェルターメディスンですので勉強をしましょう。

スポットクリーニング

トイレ掃除の例をすでに紹介しましたが、掃除は基本的に横れたところだけを最低限するスポットクリーニングが推奨されます。

掃除は猫にとってみれば自分のいる敷地内にずけずけ入られて、ガチャガチャされる恐怖の時間でしかありません。

扉を「ガチャン!」と開けられて、掃除用の洗剤や消毒などで「シュッシュッ!!」とか最悪です。

なので、トイレは先述したとおり全替え、著しく汚れた部分があればそこだけさっと掃除する

それも完璧に汚れを取る必要はありません。ゴシゴシとかいらないです。

トイレも床も壁もきれいにしたい気持ちはわかりますが、猫はピカピカになって気持ちい!とは思ってません。

敷物

タオルなどを敷くのは推奨します。

その場合、全体を覆うことができる大きなタオルではなく、小さいタオル数枚をタイルのように敷くのがいいと思います。

これなら汚れた部分のタオルだけ交換できます。大きなタオルでは、また猫を退かして、ひっぱり出さなければなりません。

冒頭の写真ではタオル等は一切敷いていません。

最初は敷いていたのですが、タオルの上にいてそのままタオルをトイレにしてしまったため、撤去しました。

それによりトイレでするようになったし、汚れても掃除しやすいケージ材質を有効利用できます。

馴れてきたらまた設置する選択肢もあります。

隠れ家

特に最初の数日は隠れ家はあったほうがいいです。やはり落ち着ける空間は確保すべきです。あったほうが馴化が早いとの研究もあります。

ただ、うちはあまり隠れ家を設置しません。たまにしか開院しない病院で管理をしているからです。

常に人の目がある場所であればシェルターは必須だと思いますが、当院は開院日でない限り朝晩の世話にしか人が来ません。なので、そんなに隠れる必要がありません。

感覚的に、当院の環境なら隠れ家がないほうが馴化が早いという理由もあります。

また、隠れ家内もトイレにしてしまうこともあり、その理由からも撤去していることが多いです。

馴化が進んでトイレの失敗もなくなったタイミングで隠れ家を入れてあげるようにしています。

シャンプー

保護猫の中にはかなり汚れている子がいます。

洗いたい気持ちはわかりますし、当院でも洗うことありますが、基本的に推奨しません。

これは飼い猫であっても、猫は基本的にシャンプーのいらない動物です。

皮膚疾患でもない限りシャンプーによるメリットより、シャンプーによるストレスデメリットのほうが大きいからです。

ほとんどの場合、健康になればグルーミングでキレイになりますしね。

ただ、保護してすぐは絶対にやめてください。子猫の場合、命にもかかわります。

まとめ

これまで説明したとおり、このケージには猫にかけるストレスを最小限に抑えた工夫がつまっています。

シェルターの環境によって細かい管理の正解は異なります。改善する参考になれば嬉しいです。

私はシェルターメディスンの専門家ではないので、改善の余地があるならご教授いただけると嬉しいです。

また、もっとしっかり勉強したい!という人は、日本動物福祉協会が毎年実施しているセミナーに参加するといいと思いますよ。

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