「特に動物で困ってない」

訪問介護や訪問看護、ヘルパーさん、ケアマネさん等、福祉事業に携わっているスタッフさんから、こういわれることがあります。確かに困ってはいないのかもしれません。しかし、いつ困りごとに発展してもおかしくない状況にまだ気づいていないケースがたくさん潜んでいます。

  1. 明日訪問したら庭で5頭の猫が生まれているかもしれません。
  2. 明後日その子猫が死んでハエがたかり、悪臭を放っているかもしれません。
  3. 来月には懐いた子猫がノミを運んでいるかもしれません。
  4. 半年後には孫猫が生まれて10頭以上に増えているかもしれません。
  5. そんな時に、飼い主さんが入院するかもしれません。

保健所勤務やこのクリニックで経験を積んでいると、なぜこんなことになるまで放っておいたんだ?と疑問に思うことが多々あります。主な原因は大きく分けて3つあると思います。ひとつは、スタッフが問題発生リスクに気づかない。ふたつめは、気づいてもどこに相談すべきかわからない。そして最後に、動物問題は手を出せないと認識している。これらは福祉事業者さまと連携が取れていなかったり、実情なにも解決策をもっていなかった獣医師サイド(保健所、動物愛護センター、動物病院等)にも問題はあります。

問題発生リスク

  • 犬に毎年狂犬病ワクチンが接種できていない
  • 餌をあたえっぱなし
  • 野良猫に餌を与えている
  • 子猫が生まれている

実はいずれか一つだけでもすでに十分な動物問題発生リスクと言えます。このようなリスク因子に気づいた時点で相談できる動物病院として当院を立ち上げました。滋賀県甲賀市の地域包括ケアセンターと行政が連携し作成したフローチャートがとても参考になります。

チラシ全部渡すとは、緊急性の高いケースを意味します。

動物問題の現状と相談先

話し相手や癒しとして動物と接点を持つ方は少なくありません。可愛がっているペットに限らず、飼い主が自分のペットと認識していない野良猫などであることも多いです。これらの不適正飼養は不要な繁殖により多頭飼育に発展します。管理しきれないほどの多頭飼育は、飼い主の生活環境や健康面の悪化、公衆衛生及び動物愛護において社会問題になっています。「犬猫の殺処分ゼロ」という目標を耳にしたことがあるかもしれません。近年では、殺処分される犬猫のほとんどは多頭飼育が供給源となっています。

多頭飼育対策ガイドライン概要図
『人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン~社会福祉と動物愛護管理の多機関連携に向けて~』より抜粋

2021年に環境省が「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン~社会福祉と動物愛護管理の多機関連携に向けて~」を示しています。経済的困窮や社会的孤立による生活困窮等の社会的支援が必要な飼い主さんと多頭飼育問題は切っても切れない関係です。そのため、社会的支援をしている福祉事業者さまが最初に動物問題に気づくことが多く、このようなガイドラインがつくられました。

これまで保健所は問題がひどくなってから初めて把握することがほとんどでした。保健所というと殺処分をイメージしてしまい、なかなか相談しにくいことも一因かもしれません。そうなる前に多頭飼育予備軍を発見できるのは社会福祉事業者さまです。社会福祉事業者さまの動物問題への「気づき」がなければ、この問題は水面下で大きくなってしまいます。問題が肥大化する前、つまり数頭だけ可愛がっている段階で、このガイドラインに沿って当院や行政に相談するのが当たり前になって欲しいです。

更に進んだ話にはなりますが、普段から信頼関係の構築されている社会福祉事業者さまの問題介入は、解決の糸口になりえます。多頭飼育は再発のリスクが高いこと等から「人の問題」と「動物の問題」として別々にとらえるのではなく、関係者が連携して対応することも重要事項としてガイドラインに記載されています。

とはいえ、いきなり動物問題に気を配ることは難しいと思います。介護保険や業務上、動物問題に介入できないケースも多いでしょう。だからこそ、当院に相談してください。

訪問スタッフの保護

多頭飼育問題への対策は担当訪問スタッフ保護という側面もあります。動物が不衛生に管理されている現場は、動物からの直接的な危害だけでなく、衛生害虫との接触、動物からもらう感染症のリスクが増加します。中には致死性の感染症もあり、無視できない問題に発展しかねません。スタッフが安全安心な環境で本来の業務に尽力できるよう、事業者が多頭飼育問題の相談先を持っていることは大変意義のあることだと思います。訪問先=職場であるため、スタッフの職場環境改善と捉え、積極的に問題解決へ介入する。御社がそんな先進的で労働環境の良い社会福祉事業者になるため、当院は協力させていただきます。

当院にできること

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適性飼養に不妊去勢手術、ワクチン、寄生虫予防は必須です。しかし、一般の動物病院では一度に受け入れることができる頭数が限られていたり、多数の手術を実施すると費用が莫大になってしまいます。当院は不妊去勢手術とワクチンや寄生虫の予防医療に限定することで、一度に多頭数の手術や注射を低価格で実施できるようにしました。

前述したように問題が大きくなる前に先手を打つことが理想です。なので、当院は不妊去勢クリニックと謳っていますが、手術まで話が進んでいない段階でも喜んで相談に乗らせていただきます訪問先や利用者さんのペット問題についてひとりで悩まないでください。とにかく早い段階で関係機関が状況を共有し、多頭飼育問題の発生や肥大化を防ぎ、健康・衛生を維持し、動物との有意義な生活を実現させることが私たちの願いです。

付録

飼育者に義務付けられていること

  • 【犬】市町村への登録(狂犬病予防法)
  • 【犬】毎年の狂犬病ワクチン接種(狂犬病予防法)
  • 【犬猫あわせて10頭以上】多頭飼育届(千葉県動物愛護管理条例)
  • 【犬10頭以上】化製場の許可(化製場法)

飼育者及びスタッフの健康衛生確保のためにすべきこと

ノミ・マダニ等予防

  • 日本紅班熱
  • 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)*致死率の高い感染症です!!
  • ノミ刺症
  • 瓜実条虫
  • 猫ひっかき病 など

上記の感染症はノミやマダニから人に感染する代表的な感染症です。基礎疾患のある方や高齢者はもちろん、健常者でも死に至る恐ろしい感染症もあります。利用者さんをはじめ、介護や送迎等のスタッフの健康保全のためにも、動物問題は無視できない問題なのです。

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