『人福祉現場に獣医師を』
当院は、『人福祉現場に獣医師を』を合言葉に、福祉事業者さまとの協働により、様々な現場での動物の不適正飼養にアプローチします。目的はあくまでも人の健康福祉向上です。
訪問先の動物問題に、
ひとりで悩まないで
福祉現場における獣医師
高齢者、独居、孤立、障がい、子育て、ヤングケアラー等々…福祉といえど様々な分野があります。
訪問して本人と接触するケアマネージャーや介護士等、特定の専門家だけで解決できる問題はむしろ少なく、地域包括支援という概念、更に近年では重層的支援体制事業が生まれているとおり、多数分野の連携による柔軟性が高く、専門性も高い支援が求められています。
その輪に加わって支援ができる獣医師はいません。福祉従事者に当院の取り組みを話しに行っても、「獣医さんがなにを?」という顔をされることもまだまだ多いです。
一方で、訪問先の動物で困った経験がありませんか?という問いには、経験ありと回答する方も少なくなく、動物問題を相談できる専門家がいたら嬉しいと話してくださいます。
ペットや野良猫の不適切な管理は、支援先である「飼い主」と支援する「福祉従事者」双方の健康福祉に悪影響を及ぼします。それを予防・改善するための獣医師が必要であると考えています。
当院やまがた不妊去勢クリニックは、飼い主のかかりつけ医になると同時に、福祉従事者さまの顧問獣医師として相談及び同行訪問を行うことができます。
動物放置で起こる問題4選
入院・入所の拒否
支援先(利用者様)である飼い主の入院・入所が必要になっても、ペットを理由に拒むことがあります。帰宅時期がはっきりしていて短期間であれば一時的に預かってもらうことも可能ですが、そうでないことも少なくありません。これは紛れもなく利用者さんの不利益になりますし、担当スタッフさんも頭を抱えてしまいます。
また、ペットの預け先は信頼できる人でないと嫌とおっしゃることも多いです。このような場合、ぽっと出てきた愛護団体や獣医師がなにを言っても、解決は難しいでしょう。こういう状況を作らないために、一見飼育に問題ない方でも、平時から会って信頼関係を築いている動物の専門家がいることが望まれます。
健康被害
多頭飼育問題への対策は訪問スタッフさんと利用者様自身の保護、防護という側面も大きいです。
動物問題のある現場は、動物からの直接的な危害だけでなく、ノミダニ等の被害、感染症のリスクが増加します。中には致死性の感染症もあり、無視できない問題に発展しかねません(詳細はページ下部付録参照)。
スタッフさんが安全安心な環境で本来の業務に尽力できるよう、動物問題の相談先を持っていることはこれからの時代必須になります。訪問先=職場であるため、スタッフの職場環境改善と捉え、積極的に問題解決へ介入する。そんな先進的な取り組みに当院は協力させていただきます。
精神的苦痛
不衛生な利用者宅への訪問は誰しも億劫なものです。放置された餌にたかる衛生害虫、生まれては死にを繰り返す子猫、やっとの思いで生きている犬猫、狂犬病ワクチン未接種の犬。ここまでくると衛生面や上記の感染症リスクだけにとどまらず、精神衛生上もいいとは言えません。スタッフが精神的苦痛に耐えられずそのお宅への訪問継続困難は明日にでも起こる問題です。また、不適正飼養は悪臭や糞尿被害で近隣とのトラブルも起こしやすいです。ご近所さんからの孤立は利用者自身のQOLを著しく落とします。
動物の置き去り
利用者さんが入院等で家をあけた場合、動物たちは取り残されます。係留されている動物は水も餌もなくなるため緊急事態です。係留されていない場合も、近所のごみをあさったり、人に危害を加える事故を起こしかねません。残された動物問題は、御社が困る問題ではないと割り切ることは簡単かもしれません。しかしスタッフが普段から目にしていた動物たちの行方は知らんぷりというのは、心情的に気持ちのいいものではありません。それを防ぐためにも、当院への相談を検討ください。
獣医師を顧問に持つメリット
1.訪問しやすくなる
電話に出ない、掘り返しがない、アポを取りにくい、アポをすっぽかされる…
このように、訪問するのに苦労するケースはありませんか?
「獣医さんと一緒に行くから、ペットのこと相談できるよ」と当院を訪問の約束を取り付けるための「エサ」として利用してください。訪問の確実性、訪問回数が飛躍的に上昇します。
定期的な訪問ができている家庭でも、動物の話ができる相手が一緒に来たということで、とても快く迎え入れてもらえ、話が弾むことも多いです。
いくら動物の管理がひどくても、当院は決して「指導」せず、寄り添い型の話し相手になることから入ります。
2.飼い主と福祉従事者、両者のかかりつけ
飼い主のかかりつけであり、福祉従事者のかかりつけ獣医師でもあります。
福祉現場の動物問題の解決には特殊な知識と経験が求められます。獣医学的知見、多頭飼育対応経験豊富で関係法令。これらの分野に明るい獣医師に気軽に相談できる唯一無二の動物病院が当院です。解決まで時間を要する問題に、長期目線で継続的に支援します。
3.利用者様からの信頼度UP
獣医師を相談先に持ち、同行することで、利用者様からの信頼度が上がり、福祉サービスの円滑な提供が可能となるケースも。適切な動物の管理に結びつけば、当然利用者様のQOLも向上します。
4.業務への専念
ご自身の福祉支援業務に専念しなければならないからこそ、動物関係の悩みはすぐに専門家に投げられる環境を持つべきです。
各スタッフさんが様々な手段ですぐに相談できます。自らの業務以外の余計なことに悩む負担は予想以上に大きいものです。
4.働き方改革
訪問スタッフにとって訪問先は立派な職場の一部です。訪問先の環境改善は職場環境改善を意味し、働きがいや職場満足度向上が期待できます。
「特に困っていない」
福祉事業に携わっているスタッフさんから、「特に動物に困っていない」と言われることがあります。確かに困ってはいないのかもしれません。
しかし、いつ困りごとに発展してもおかしくない状況にまだ気づいていないケースがたくさん潜んでいます。
例えば…
- 明日訪問したら庭で5頭の猫が生まれているかもしれません。
- 明後日その子猫が死んでハエがたかり、悪臭を放っているかもしれません。
- 来月には懐いた子猫がノミを運んでいるかもしれません。
- 半年後には孫猫が生まれて10頭以上に増えているかもしれません。
- そんな時、飼い主さんが入院するかもしれません。
保健所勤務や当院で経験を積んでいると、なぜこんなことになるまで放っておいたんだ?と疑問に思うことが多々あります。主な原因は大きく分けて3つあると思います。
- 問題発生リスクに気づくことができない
- どこに相談すべきかわからない
- 動物問題は手を出せないと認識している
問題発生リスク
気づくことが難しい動物問題発生リスクの代表例は下の4点です。また更に下のフローチャートもとても参考になります。このようなリスク因子に気づいた時点で相談できる動物病院として当院を立ち上げました。
- 犬に毎年狂犬病ワクチンが接種できていない
- 野良猫に餌を与えている
- 餌をあげっぱなし
- 子猫が生まれている
自分の訪問先もリスクあるかもしれないと少しでも感じた場合、もう一度注視してみたり、飼い主と少しだけ動物について話してみるのもいいかもしれません。
動物問題の相談先
2021年、環境省が「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン~社会福祉と動物愛護管理の多機関連携に向けて~」を示しています。
しかし、福祉現場における動物問題を相談できる組織がないのが現状です。
このような問題を相談できる組織として、当院やまがた不妊去勢クリニックを立ち上げました。
経済的困窮や社会的孤立による生活困窮等の理由により、社会的または福祉的支援が必要な飼い主さんと多頭飼育問題は切っても切れない関係です。
そのため、支援をしている福祉事業者さまが最初に動物問題に接することが多いです。
とはいえ、福祉従事者さまが動物問題に気を配ることは難しいと思います。介護保険や業務上の理由により動物問題に介入できないことも理解していています。だからこそ、ちょっとしたことから当院に相談してください。
当院の特徴
問題が大きくなる前に先手を打つことが重要です。
当院は「不妊去勢クリニック」と謳っていますが、手術まで話が進んでいない段階でも喜んで相談に乗らせていただきます。問題解決に大事なことは、飼い主さんとの信頼関係を築くことです。
だからこそ早めのご相談を。訪問先や利用者さんのペット問題についてひとりで悩まないでください。とにかく早い段階で関係機関が状況を共有し、多頭飼育問題の発生や肥大化を防ぎましょう。
健康福祉・生活環境衛生を維持し、動物との有意義な生活を実現させることが私たちの願いです。
付録
ノミ・マダニ由来人獣共通感染症
- 日本紅班熱
- 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)*致死率の高い感染症です!!
- ノミ刺症
- 瓜実条虫
- 猫ひっかき病 など
上記の感染症はノミやマダニから人に感染する代表的な感染症です。基礎疾患のある方や高齢者に限らず、若い健康な方でも死に至る恐ろしい感染症もあります。利用者さんをはじめ、介護や送迎等のスタッフの健康保全のためにも、動物問題は無視できない問題なのです。
飼育者に義務付けられていること
- 【犬】市町村への登録(狂犬病予防法)
- 【犬】毎年の狂犬病ワクチン接種(狂犬病予防法)
- 【犬猫あわせて10頭以上】多頭飼育届(千葉県動物愛護管理条例)
- 【犬10頭以上】化製場の許可(化製場法)