保護団体による保健所からの引き出し失敗例

とある保護団体のXのポストを元に今回の記事を書いています。

あくまで事実としてわかっていることベースでお話します。

わかっている事実とは、健康状態の悪い殺処分対象の猫を某動物保護団体が保健所から引き出したものの、亡くなってしまったということです。

万に一つ、保健所から引き出してないのではないか?保健所は殺処分対象と言っていないのではないか?ということも頭をよぎりますが、そこは事実として進めます。

まずはこの事実における反省点について解説します。

音声解説はこちら

当該Xのポストから他に推察できることは多く存在するのですが、推察ベースでの話は次の記事にします。

保健所の反省点

まず保健所が殺処分対象とした、または対象になりそうと愛護団体が判断するような状態の悪い動物は、すみやかに保健所で殺処分、安楽殺すべきです。

愛護団体へ引き渡し後に死亡していますので、死期が近かったことは間違いありません。

保健所の獣医師は、治療可能かどうか、安楽殺すべき状態かどうかを判断すべき立場です。

治療可能だけど保健所では治療できないから、愛護団体さんに引き出してもらって治療してもらったほうが良いと判断したなら、仕方のないことです。

ですが今回はそれが判断ミスだったという結果は間違いありません。

死期が近いかどうかの判断は決して簡単ではありません。そういうことはあり得ます。あくまで結果論です。

ただ、保健所は反省すべきケースだということは間違いありません。

保護団体の反省点

愛護団体は助けようとして引き出したのですが、その努力実らず亡くなってしまいました。

保健所の判断ミスと同様に、治療が実らないことも当然あります。

ただ、ポスト内容には疑問を呈する部分がありました。

「見かけた人が駆虫薬を垂らしてくれたら違ったのかな」

このような言葉は、診断を甘く見て、普段から処方薬を軽率に使っていなければ出ない言葉だと思います。

そして終始、自分たちのやったことが間違っていたとは疑わない内容のポスト。

保護団体が引き取らず、保健所で速やかな安楽殺ができていれば、その猫が苦しむ時間を短縮できました。

しかし、愛護団体が引き出し、それを保健所が了承したことで、この猫の苦しむ時間が長引きました。

これはまぎれもなく動物福祉の保持に反する行為です。

繰り返しますが、結果論です。死んでしまったことは結果論ですが、こういう命の延長はいいことではないという認識を持つべきであり、そういう発信をしてほしかったです。

SNSの投稿なので、印象良くなるように書くのはある程度仕方のないことだと思います。

投稿の裏で、自分たちのやったことがこれでよかったのか自問自答してくれてることを願います。

「外猫は可哀想。」

「もっと早く見つけていれば。」

「誰かが駆虫薬を垂らしていれば。」

など、そういうことではなく、自分たちがやったことの反省を。

ポストへのコメント

この団体のポストに対するコメントを覗いたところ、多くがこの団体の行動を称賛するものでした。

普段の保護活動は本当に大変で、保健所もこの団体に助けられているでしょうし、保護活動はなくてはならない存在だと私も思います。

ですが、これまで説明したように今回のケースは失敗例です。

猫は苦しい時間が延びただけで、良い結果はひとつも得られませんでした。

にも関わらず世論はそこを理解できていません。

個別のコメントへの突っ込みは避けますが、一般論の質の低さは我々動物の専門家側の責任かもしれません。

もっと正しい動物福祉を普及しなければならないことを再認識しました。

動物福祉の理解度

「助けようとした気持ちが大事」

「保健所で安楽死か、保護団体に囲まれて死んでいくのはどっちがいいかは価値観による」

のような意見の人がいます。

動物福祉は、人の気持ち、価値観、信条・信仰とは無関係な科学なものです。科学的に猫が苦痛を感じる時間を延長させることは動物福祉に反します。

人馴れしていないような猫にとって見知らぬ人に囲まれて観察、撮影されることは高ストレス負荷でもあります。そんな中死んでいった猫は幸せではありません。

まとめ

結果的に、猫が苦しんで死んでいった事実は間違いありません。そこに、関係者各位が反省すべき点が間違いなく存在します。

その反省をせずに、努力むなしく死んでしまったというある種美談にすることは到底許される行為ではありません。

次の記事ではもう少し突っ込んだ解説をします。

推察ベースになるので、事実と異なってしまう可能性もありますが、こういう点は気をつけなければならないんだなという視点を持つための参考になればと思い、綴ります。

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